法律事務所のホームページを作るとき、いちばん迷いやすいのが「どこまで書いてよいか」です。弁護士の広告には、日本弁護士連合会(日弁連)が定めたルールがあり、一般の会社と同じ感覚で「地域No.1」「離婚の専門家」と書くと、ルールに触れるおそれがあります。
この記事では、弁護士の広告規制の中身を、ホームページを作る・直す立場から整理しました。書いてはいけない表現、必ず載せる表示、2026年(令和8年)の指針改正で見直したい点まで、日弁連の規程と指針の原文をもとにまとめています。
この記事でわかること
- 弁護士の広告規制の全体像(規程と指針)
- 禁止される広告7つと、表示できない事項
- 「専門」「No.1」「解決事例」などホームページでの書き方
- ホームページに必ず載せる表示
- 令和8年の指針改正で見直したいポイント
※この記事は、ホームページ制作の実務の目安として規程・指針の内容をまとめたものです。個別の表現が問題になるかどうかの最終的な判断は、原文や所属弁護士会の見解をご確認ください。
弁護士の広告規制とは
弁護士の広告は、2000年に原則として自由化されました。ただし、何を書いてもよいわけではなく、日弁連の会規である「弁護士等の業務広告に関する規程」(以下、規程)と、その解釈を示した「業務広告に関する指針」(以下、指針)に沿う必要があります。
| ルール | 位置づけ | 最終改正 |
|---|---|---|
| 弁護士等の業務広告に関する規程 | 日弁連の会規。禁止事項や表示義務を定める | 令和7年12月5日 |
| 業務広告に関する指針 | 規程の解釈・運用の考え方と具体例を示す | 令和8年2月19日 |
ホームページも「広告」になる
規程では、広告を「顧客または依頼者を誘引することを主たる目的」として、自分や自分の業務を知らせる情報の伝達・表示と定めています(規程第2条)。事務所のホームページは、相談を集める目的で作るのが普通なので、多くの場合この広告にあたると考えておくのが安全です。
指針では、顧客を誘引する目的があるかどうかは、内容や状況を総合して判断するとしています。令和8年の改正では、SNSの動画なども誘引目的が認められる場合がある例として挙げられました。
禁止される広告7つ(規程第3条)
規程第3条は、次の7種類の広告を禁止しています。ホームページの文章を書くときは、この7つに当てはまらないかを確認します。
| 禁止される広告 | ホームページで起きやすい例 |
|---|---|
| ① 事実に合致していない広告 | 実在しない解決事例、依頼者が関わっていない「お客様の声」 |
| ② 誤導または誤認のおそれのある広告 | 勝訴率の表示、体制がないのに「24時間365日相談対応」 |
| ③ 誇大または過度な期待を抱かせる広告 | 高額な回収事例ばかりを強調する |
| ④ 困惑させ、または過度な不安をあおる広告 | 「今すぐ請求しないとあなたの過払金は失われます」 |
| ⑤ 特定の弁護士や事務所と比較した広告 | 他の事務所名を挙げて費用や実績を比べる |
| ⑥ 法令や日弁連・弁護士会の会則・会規に違反する広告 | 景品表示法などの法令に触れる表示 |
| ⑦ 品位または信用を損なうおそれのある広告 | 弁護士の品位にそぐわない表現 |
右の列の例のうち、「お客様の声」「勝訴率」「24時間365日」「過払金」の例は、指針で具体的に挙げられているものです。
表示できない事項(規程第4条)
次の事項は、広告に載せることができません。ただし②〜④は、依頼者の同意がある場合などの例外があります。
- 訴訟の勝訴率
- 顧問先や依頼者の名前(書面または電磁的方法による同意がある場合を除く)
- 受任中の事件(依頼者の同意がある場合や、依頼者が特定されず不利益を与えるおそれがない場合を除く)
- 過去に取り扱った事件(同意がある場合、広く知られた事件の場合、依頼者が特定されず不利益を与えるおそれがない場合を除く)
企業法務の事務所で「主な顧問先」としてロゴを並べたい場合は、各社から書面などで同意を得ておく必要があります。
ホームページでよく使う表現の書き方
ここからは、法律事務所のホームページで迷いやすい表現を、指針の考え方に沿って整理します。
| よくある表現 | 指針での扱い | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 「離婚問題の専門家」「相続のプロ」 | 専門性を判定する客観的な基準がないため、表示を控えることが望ましい。「スペシャリスト」「エキスパート」も同じ | 「取扱分野」「取扱業務」と書く |
| 「得意分野」 | 主観的な評価なので違反ではない。ただし得意でない分野を得意とは書けない | 実際に多く扱っている分野だけに使う |
| 「勝訴率95%」 | 誤導・誤認のおそれのある広告にあたる | 載せない |
| 「地域No.1」「一番」「最も」 | 最大級の表現は、文脈によって事実に反する広告や誇大な広告になりうる | 取扱件数など、客観的な事実だけを書く |
| 解決事例・お客様の声 | 架空の事例や脚色した事例、依頼者が関わっていない声は虚偽表示にあたる | 同意を得た実際の事例を、依頼者が特定されない形で書く |
| 「着手金0円」「着手金0円〜」 | 別に手数料や管理料を受け取る場合は不正確な表示になる | 費用の内訳を表で示す。実費を別に受け取る場合はその旨を書く |
| 「24時間365日相談対応」「全国対応」 | 相談・受任の体制が整っていないのに表示すると、誤解を与える表現になる | 受付時間と実際の対応方法をそのまま書く |
| 「今すぐ相談しないと手遅れに」 | 過度な不安をあおる広告にあたるおそれがある | 時効や申立て期限などの事実を、根拠とともに伝える |
「専門」は使えないのか
指針は「専門」の表示を禁止とはしていませんが、「控えることが望ましい」としています。ホームページでは「取扱分野」「取扱業務」と書いておけば、指針上の問題はありません。そのうえで、その分野のページやコラムを充実させれば、文章で「専門」と言わなくても、その分野に力を入れていることは十分に伝わります。
解決事例を載せたいとき
解決事例は、相談を考えている人にとって参考になる情報です。載せる場合は、依頼者の同意を得たうえで、地域・年齢・職業・金額などから依頼者が特定されない形に書き換えます。読む人に「自分も同じ結果になる」と過度な期待を持たせないよう、事案ごとに結果が変わることも添えておくと安心です。
ホームページに必ず載せる表示(規程第9条)
広告には、次の事項を表示しなければなりません(規程第9条)。ホームページでは、フッターや事務所概要ページなど、どのページからも確認できる場所に載せておくのが確実です。
| 広告をする人 | 表示しなければならない事項 |
|---|---|
| 弁護士 | 氏名(職務上の氏名を使っている場合はその氏名)、所属弁護士会 |
| 弁護士法人 | 名称、主たる法律事務所または広告に関係する従たる法律事務所の名称、所属弁護士会 |
東京弁護士会は、事務所のウェブサイトに所属弁護士会の表示がないものは違反広告であると注意を呼びかけています。所属弁護士会の書き忘れは、意外と多いので見直しておきましょう。
電話やメールで受任する場合
電話・電子メールなどの通信手段で法律事務を受任する場合は、上の表示に加えて、次の事項も表示する必要があります(規程第9条の2)。
- 受任する法律事務の内容と範囲
- 報酬の種類・金額・算定方法・支払時期
- 委任事務が終わるまで委任契約を解除できること、途中で終わった場合の清算方法
令和8年の指針改正で見直したいポイント
指針は令和8年2月19日に改正され、多くの部分が令和8年4月1日から、広告記録の保存に関する一部が令和8年7月1日から施行されています。ホームページに関係が深いのは、次の点です。
| 施行日 | 主な内容 |
|---|---|
| 令和8年4月1日 | SNSの動画など、顧客誘引の目的が認められる場合の例示 |
| 令和8年4月1日 | 弁護士報酬や着手金の不正確な表示を、誤導・誤認のおそれがある例に追加 |
| 令和8年4月1日 | 「借金減額診断」など、処理方針を判断できるかのように見せる表示や、診断ページから勧誘する行為の扱いを明確化 |
| 令和8年4月1日 | 自己破産への不安をあおる表現を、過度な不安をあおる例に追加 |
| 令和8年4月1日 | バナー広告での表示や、ウェブ・SNS広告の記録の保存についての考え方 |
| 令和8年7月1日 | 保存する記録に、広告業者との契約書等と、その契約に関する入出金の記録を追加 |
なお、令和7年2月20日施行の改正でも、体制がないのに「24時間365日対応」「全国対応」と表示することや、「借金減額診断」で入力された情報をもとに広告を送ることなどへの考え方が示されています。債務整理を扱う事務所は、診断コンテンツやフォームの作りもあわせて確認しておくとよいでしょう。
広告の記録は3年間保存する
広告をした弁護士は、広告が終わってから3年間、次の記録を保存しなければなりません(規程第11条)。
- 広告物、またはその複製・写真などの記録
- 広告の日時・場所・送付先など、広告の方法に関する記録
- 広告業者との契約書など、契約の内容がわかる書面や電磁的記録
- その契約に関する入出金の記録
- 顧問先名や事件を表示する場合の、依頼者の同意を示す書面や電磁的記録
ホームページは更新すると以前の内容が消えてしまいます。大きく書き換えるときは、更新前のページを保存しておく、制作会社との契約書や請求書をまとめて保管しておくといった運用を決めておくと安心です。
制作会社やポータルサイトに任せるときの注意点
規程第8条は、第三者が規程に反する情報を発信している場合に、お金を払ったり協力したりすることを禁止しています。つまり、制作会社やポータルサイトが書いた文章でも、その内容に責任を持つのは弁護士自身です。
- 制作会社が書いた原稿は、公開前にすべて目を通す
- 「専門」「No.1」「着手金0円」など、指針で注意が必要な表現が入っていないか確認する
- 解決事例やお客様の声は、実際の事例か、同意を得ているかを確認する
- ポータルサイトの掲載ページも、自分の事務所の広告として内容を確認する
違反するとどうなるか
弁護士会は、広告が規程に違反している疑いがあるときに調査を行い、違反があれば中止や排除などを命じます。命令に従わない場合などは、命令をした事実と理由の要旨を公表できるとされています(規程第12条)。また、違反の内容によっては懲戒の対象になることもあります。
ホームページは公開されたまま長く残るため、作る段階でルールに沿った文章にしておくことが、いちばんの予防になります。
エアライフの弁護士・法律事務所向けホームページ制作
エアライフでは、法律事務所のホームページを、業務広告の指針に沿った原稿で制作しています。取扱分野ごとのページと解説コラムで検索から相談を集める作りにし、公開前には先生にすべての原稿を確認していただきます。最終的な判断は先生にお任せしたうえで、迷いやすい表現の書き方をご提案します。
弁護士の経歴・登録年・所属弁護士会・取扱分野をまとめたプロフィールページも作り、検索エンジンやAI検索に事務所の情報が正しく伝わる形に整えます。デザインのサンプルも公開していますので、詳しくは弁護士・法律事務所のホームページ制作をご覧ください。
まとめ
- 弁護士のホームページは、日弁連の「業務広告に関する規程」と「指針」に沿って作る
- 事実と違う広告、誤解や過度な期待を招く広告、不安をあおる広告などの7種類は禁止
- 勝訴率は載せられない。顧問先や事件は同意などがある場合に限られる
- 「専門」は控え、「取扱分野」「取扱業務」と書く
- 氏名と所属弁護士会は必ず表示する
- 令和8年の指針改正で、費用表示・診断コンテンツ・広告記録の保存などが明確になった
- 制作会社やポータルの文章も、責任を持つのは弁護士自身
出典:日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」(令和7年12月5日改正)、「業務広告に関する指針」(令和8年2月19日改正)、東京弁護士会「事務所のウェブサイトに、所属弁護士会の表示がないものは違反広告です。」


