「弁護士は食えない時代になった」「年収300万円の弁護士もいる」。こうした話を耳にして、実際はどうなのかが気になっている方も多いと思います。
この記事では、日弁連が公表している調査データをもとに、弁護士の収入・所得の実態を確かめます。そのうえで、「仕事がない」と感じている事務所が見直したい集客のポイントを、法律事務所のWeb集客を支援している立場からまとめました。
この記事でわかること
- 弁護士の収入・所得の平均値と中央値、所得の分布(日弁連の調査)
- 経験年数ごとの収入・所得の違い
- 「食えない」と言われるようになった背景
- 収入に差がつく理由
- 仕事を増やすために事務所が見直したいこと
- 独立する前に準備しておきたいこと
弁護士の収入・所得の実態(日弁連の調査)
日弁連は、弁護士の収入や所得について定期的に調査し、弁護士白書で公表しています。ここでは「収入」は売上や給与の合計、「所得」は経費などを差し引いたあとの金額です。
2023年調査(2022年分)
| 項目 | 中央値 | 5%調整平均 |
|---|---|---|
| 収入 | 1,500万円 | 2,082.6万円 |
| 所得 | 800万円 | 1,022.3万円 |
出典:日弁連「弁護士白書2023年版」弁護士実勢調査。5%調整平均は、上下の極端な値を除いて計算した平均。
同じ調査で所得の分布を見ると、所得200万円未満が10.0%、200万円以上500万円未満が17.6%で、あわせて約3割が所得500万円未満でした。一方で、所得2,000万円以上の弁護士も1割余りいます。
収入の推移
過去の調査と比べると、弁護士の収入(中央値)は下がってきています。
| 調査 | 収入の平均値 | 収入の中央値 |
|---|---|---|
| 2000年 | 3,793万円 | 2,800万円 |
| 2010年 | 3,304万円 | 2,112万円 |
| 2020年 | 2,558万円 | 1,437万円 |
出典:日弁連「弁護士白書2021年版」特集(弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査2020)。調査によって収入の聞き方が異なるため、単純な比較には注意が必要。
2000年に2,800万円だった収入の中央値は、2020年には1,437万円と、およそ半分になりました。2020年調査の所得の中央値は700万円です。
所得の分布:2020年と2023年
「年収300万円の弁護士」は、どのくらいいるのでしょうか。所得の分布を2つの調査で比べると、次のとおりです。
| 所得 | 2020年調査(2019年分) | 2023年調査(2022年分) |
|---|---|---|
| 200万円未満 | 12.9% | 10.0% |
| 200万円以上500万円未満 | 19.0% | 17.6% |
| 500万円未満の合計 | 約31.9% | 約27.6% |
| 所得の中央値 | 700万円 | 800万円 |
出典:弁護士白書2021年版 特集、弁護士白書2023年版。2020年調査は「0」の回答を含む。
所得500万円未満の弁護士は、どちらの調査でも3割前後います。「年収300万円の弁護士もいる」という話は、一部の弁護士については事実といえます。ただし、全体の中央値は700万〜800万円で、多くの弁護士が「食えない」状態にあるわけではありません。
経験年数で大きく違う
2020年調査では、司法修習の期(おおよその登録年)ごとの収入・所得も公表されています。主な期を抜き出すと、次のとおりです。
| 司法修習期 | 収入の中央値 | 所得の中央値 | 所得の平均値 |
|---|---|---|---|
| 70期〜(登録数年以内) | 660万円 | 461万円 | 519.3万円 |
| 66〜69期 | 900万円 | 550万円 | 860.3万円 |
| 60〜65期 | 1,400万円 | 799万円 | 955.0万円 |
| 55〜59期 | 2,110万円 | 1,000万円 | 1,514.1万円 |
| 45〜49期 | 2,951万円 | 1,043万円 | 1,518.9万円 |
| 30〜34期 | 2,748万円 | 1,000万円 | 1,298.8万円 |
出典:日弁連「弁護士白書2021年版」特集(2019年分の収入・所得)
登録して数年以内の弁護士(70期以降)は、所得の中央値が461万円でした。経験を重ねた中堅以上では、所得の中央値が1,000万円前後になります。「食えない」と言われる状況は、とくに若手や、独立したばかりで依頼の経路が少ない弁護士に起きやすいことがわかります。
「食えない」と言われるようになった背景
弁護士の数が増えた
日弁連の弁護士白書(2025年版)によると、弁護士数(正会員)は2000年の17,126人から、2025年には46,243人になりました(各年3月31日現在)。25年で約2.7倍です。弁護士1人あたりの仕事の取り合いが起きやすくなり、待っていても依頼が来る状態ではなくなりました。
司法試験の合格者数も、法務省の資料によると令和6年が1,592人、令和7年が1,581人で、いずれも1,500人を超えています。弁護士の数は、これからも増え続けると見込まれます。
多く扱われる分野が変わった
2010年調査と2020年調査で、弁護士が多くの時間を使った分野を比べると、上位の顔ぶれが変わっています。
| 順位 | 2010年調査 | 2020年調査 |
|---|---|---|
| 1 | 離婚(60.7%) | その他一般民事(77.1%) |
| 2 | 遺言・相続(60.1%) | 家族/相続(72.3%) |
| 3 | クレ・サラ事件(54.0%) | 家族/離婚・親子(68.4%) |
| 4 | 刑事弁護(48.5%) | 不動産/不動産賃貸借(63.3%) |
| 5 | 債権回収(45.8%) | 交通事故/当事者代理(62.8%) |
出典:日弁連「弁護士白書2021年版」特集。調査ごとに分野の区分が異なるため、目安として比較。
2010年に3位だった消費者金融・クレジットの借金をめぐる事件(クレ・サラ事件)は、2020年調査では債務整理(企業以外)として55.8%で6位になりました。特定の分野だけに頼っていると、その分野の相談が減ったときに収入が大きく落ちます。複数の分野で相談の入口を持っておくことが、収入を安定させる備えになります。
相談先を探す方法が変わった
相談する側は、検索やGoogleマップ、ポータルサイトで弁護士を探して比べられるようになりました。紹介や看板だけでは、相談先の候補に入りにくくなっていると考えられます。
収入に差がつく理由
データを見ると、弁護士全体が一律に食えなくなったわけではなく、収入の差が大きいことがわかります。差がつく理由としては、次のようなものが考えられます。
- 経験年数 登録して間もない時期は、依頼者や紹介元がまだ少ない(前述のとおり、70期以降の所得中央値は461万円)
- 働き方 勤務弁護士か、独立して事務所を経営しているか
- 取扱分野 企業の顧問契約のように継続的な収入がある分野と、単発の事件が中心の分野がある
- 集客の仕組み 紹介やホームページなど、新しい依頼が入ってくる経路があるかどうか
このうち、事務所の努力で変えやすいのが「集客の仕組み」です。
「仕事がない」と感じたら見直したいこと
取扱分野を絞って伝える
「何でも扱います」という見せ方では、相談する側は「自分の悩みに強い事務所か」を判断できません。力を入れたい分野を決め、分野ごとにページを作って、どんな相談に対応しているかを具体的に伝えます。
ホームページを「見つかる」状態にする
名刺代わりのホームページがあるだけでは、検索から相談は来ません。「地域名+分野+弁護士」で探されたときに見つかるよう、取扱分野ページと解説コラムを整えます。作り方は弁護士・法律事務所のSEO対策で詳しく解説しています。
ポータルの費用と効果を確かめる
ポータルサイトに掲載している場合は、どれだけ相談が来て、何件が受任につながったかを記録し、掲載料に見合っているかを確かめます。法律事務所の集客をお手伝いしていると、ポータルについて「掲載料が高い」「効果が分かりにくい」「届く相談の質が良くない」という声を先生方から聞きます。使い分けの考え方は弁護士ポータルサイトは必要?でまとめています。
紹介元に知ってもらう
以前の依頼者や他士業に、取扱分野と相談の受け方を伝えておくことも大切です。ただし、紹介を受けたことへの謝礼など、紹介の対価を払うことは弁護士職務基本規程で禁止されています。集客で守るべきルールは弁護士の集客方法7つで整理しています。
広告ルールの範囲で、伝えられることは伝える
弁護士の広告には日弁連のルールがありますが、取扱分野、経歴、費用の目安、相談の流れなど、伝えられることは多くあります。ルールを理由に情報を出さないままでいると、相談する側に選ばれにくくなります。書いてよいこと・いけないことは弁護士の広告規制とはを参考にしてください。
独立する前に準備しておきたいこと
経験年数別のデータからわかるとおり、収入が伸びるまでには時間がかかります。とくに独立を考えている場合は、開業前から次の準備を進めておくと、開業直後の空白期間を短くできます。
- 力を入れる分野を決める 勤務時代に多く扱った分野や、地域で相談が多い分野から選びます。
- ホームページを開業日に間に合わせる 取扱分野ページ、プロフィール、費用、相談の流れをそろえておきます。検索に出るまで時間がかかるため、早く公開するほど有利です。
- Googleビジネスプロフィールを作る 事務所の住所が決まったら、名前・住所・電話番号をホームページと同じ表記で登録します。
- 紹介元に開業を知らせる 以前の依頼者、他士業、知人に、取扱分野と連絡先を伝えます。
- 当面の集客手段を決める ホームページが育つまでの間、ポータルサイトや広告をどの程度使うかを決めておきます。
よくある質問
弁護士は本当に年収300万円なのですか?
一部にはいます。日弁連の2023年調査では、所得500万円未満の弁護士が約3割、所得200万円未満が10.0%でした。一方、所得の中央値は800万円で、全体としては「食えない」とまではいえません。
若手の弁護士はどのくらい稼いでいますか?
2020年調査では、70期以降(登録して数年以内)の弁護士の収入の中央値は660万円、所得の中央値は461万円でした。66〜69期では所得の中央値が550万円、60〜65期では799万円と、経験とともに上がっています。
収入を上げるには何から始めればよいですか?
事務所の努力で変えやすいのは、新しい依頼が入ってくる経路を増やすことです。取扱分野を決めてホームページで伝え、紹介元に知ってもらい、ポータルや広告は費用と効果を確かめながら使います。具体的な方法は弁護士の集客方法7つで解説しています。
エアライフの弁護士・法律事務所向けホームページ制作
エアライフでは、法律事務所のホームページを、取扱分野ごとのページと解説コラムで検索から相談を集める作りで制作しています。キーワードは実際の検索数を調べて選び、業務広告の指針に沿った原稿で、公開前に先生にすべて確認していただきます。ポータルサイトだけに頼らない集客の土台づくりをお手伝いします。
詳しくは弁護士・法律事務所のホームページ制作をご覧ください。
まとめ
- 日弁連の2023年調査では、弁護士の収入の中央値は1,500万円、所得の中央値は800万円
- 一方で、所得500万円未満の弁護士も約3割いて、収入の差は大きい
- 収入の中央値は2000年の2,800万円から2020年の1,437万円へ下がった
- 登録数年以内の若手(70期以降)は所得の中央値が461万円で、経験とともに上がる
- 多く扱われる分野は変わる。1つの分野だけに頼らず、複数の相談の入口を持つ
- 弁護士数は2000年の17,126人から2025年の46,243人へ増え、待っていても依頼が来る時代ではなくなった
- 仕事を増やすには、取扱分野を絞って伝え、ホームページを見つかる状態にし、ポータルの費用対効果を確かめる
出典:日本弁護士連合会「弁護士白書2023年版」、「弁護士白書2021年版」特集、「弁護士白書2025年版」弁護士数の推移


