原材料費や人件費、光熱費の上昇が続き、値上げを考えている飲食店は多いと思います。一方で「値上げしたら常連さんが離れるのでは」という不安から、判断を先送りにしているお店も少なくありません。
先に結論を書くと、「値上げしてもお客様が離れない」と「値上げしても売上が落ちない」は別の話です。値上げを受け入れて通い続けるお客様でも、来店の回数を減らすことがあるからです。
この記事では、日本国内で公開されている調査データをもとに、値上げしたときの顧客心理と来店頻度の変化を整理します。そのうえで、月商300万円のお店を例に、売上・粗利・LTV(顧客生涯価値)がどう変わるかを試算します。自店の数字を当てはめて計算できるよう、計算式とシミュレーターも載せています。
なお、記事中の調査データはすべて原典を確認したものだけを載せ、試算は「仮定の数字」と明記して区別しています。
飲食店の値上げで顧客はどう行動するのか
調査を見ると、値上げで「他の店に乗り換える」人は少数派です。ただし「通う回数を減らす」人は半数を超えています。

「通い続ける」の中身は「回数を減らして通う」が多数派
ビートレンド株式会社が2026年4月に公表した調査では、「お気に入りのお店(飲食店または小売店)が10%程度の値上げをした場合、利用頻度はどう変わるか」を聞いています。
| 回答 | 割合 |
|---|---|
| 全く変わらない(通い続ける) | 16% |
| 少し減るが、引き続き利用する | 52% |
| 他のお店(より安い店)に乗り換える | 15% |
| 上記以外 | 17% |
調査概要:インターネット調査、2026年3月26日〜29日、20代〜70代の男女419名。出典:ビートレンド株式会社「物価高におけるお店選びの実態調査」。「上記以外」17%の内訳は公開資料の本文に記載がありません。
継続利用の意向がある人は合計68%です。しかし、そのうち52ポイント分は「少し減る」と答えています。これまでどおり通うと答えたのは16%にとどまります。
ただし、この数字は「値上げされたらどうするか」という意向です。実際に52%の人が来店を減らしたという記録ではありません。また、対象は飲食店だけでなく小売店も含みます。
外食そのものの回数を減らした人は約3割
株式会社ファンくるが2024年11月に行った調査では、値上げをきっかけに外食の頻度が「減った」人が32%、「変わらない」が67%、「増えた」が2%でした。さらに、値上げによってメニュー選びに変化があった人は63%います。
調査概要:インターネット調査、2024年11月15日〜25日、「ファンくる」会員996名(男性242名・女性754名)。出典:株式会社ファンくる「外食における値上げについての意識調査」(エキサイトニュース掲載)
こちらは外食全体の利用回数に関する回答です。値上げは「どの店を選ぶか」だけでなく「何を注文するか」「何回外食するか」にも影響していることがわかります。回答者の約4分の3が女性である点には注意が必要です。
値上げへの「理解」と「利用の維持」は別
株式会社ぐるなびが2022年6月に公表した会員1,000人への調査では、飲食店の値上げについて「値上げはしてほしくないが、仕方がない」が54.9%、「昨今の状況からして、値上げは当然」が17.7%でした。合わせて7割以上が理解を示しています(出典:AdverTimes 2022年6月15日)。
その一方で、同じ調査では「ポイントやクーポンなど、サービス拡充をしてほしい」が42.8%、「外食を減らすか、利用しなければよい」が11.6%ありました。理解はしても、何も変えないわけではないということです。
顧客満足度によって値上げ許容度は変わる
「また来たい」と思われているお店ほど、値上げを「高い」と感じるラインが高いことが、覆面調査のデータから分かっています。
再来店意向が高いと「高い」と感じ始める幅は約4倍
飲食店の覆面調査を手がける株式会社MS&Consultingは、飲食300法人・30,802件の覆面調査(2022年7〜12月)を分析しています。「実際に使った金額」と「何円くらいから高いと感じ始めるか」の差を、値上げ許容度として扱っています。
| 「このお店にまた来たいと思いましたか?」への回答 | 高いと感じ始める値上げ幅(平均) |
|---|---|
| たぶん来ない/絶対来ない | +3.9% |
| 必ずまた来たい | +16.7% |
出典:株式会社MS&Consulting「客単価でお客様の『値上げ許容度』は変わるのか?」(2023年3月29日)。サービス学会第11回国内大会での論文発表の抜粋です。
差は12.8ポイントです。この分析では、居酒屋業態を客単価の高い帯・低い帯に分けても「いずれの客単価でも、CSが高いほど値上げ許容度も高まる」とされています。また、不満がある場合は「客単価が高い方が値上げ許容度の低下に及ぼす影響が大きい」とも報告されています。客単価の高いお店ほど、料理や接客への不満が値上げの反発に直結しやすいということです。
平均では「+12.5%」から高いと感じる
同社が2022年12月に公表した別の調査(外食211社・6,152店舗・6,327調査、2022年7月25日〜9月4日)では、来店客は現在の支払金額に対して平均+12.5%の値上げで「高い」と感じ始めるとされています。満足度が低い場合は、+1.7%の値上げでも「高い」と感じられてしまうという結果も出ています(出典:MS&Consulting プレスリリース 2022年12月7日)。
この2つは調査の対象数も期間も異なるため、数字をそのまま比べることはできません。ただ、どちらも「満足度が高いほど値上げを受け入れられやすい」という同じ傾向を示しています。
注意:これは「離反率」ではない
ここで紹介したのは「何%から高いと感じるか」という価格の感覚です。値上げしたあとに実際に何%のお客様が来なくなったかを測ったものではありません。また、「満足度を上げれば許容度が上がる」という因果関係まで証明したものでもありません。それでも、値上げの前に料理や接客の質を見直す理由としては十分参考になるデータです。
5%・10%の値上げで売上はどう変わる?
10%値上げしても、注文数が9.09%以上減れば売上は値上げ前を下回ります。ここからは仮定の数字による試算です。

前提条件(仮定)
- 月間売上:300万円
- 客単価:3,000円
- 月間注文数:1,000件
- 値上げ率:5%・10%
- 注文数の減少率:0〜15%を仮定(前述のアンケート結果から推計した数字ではありません)
値上げ後の月間売上
| 注文数の減少率 | 5%値上げ後 | 10%値上げ後 |
|---|---|---|
| 0% | 315.0万円 | 330.0万円 |
| 5% | 299.25万円 | 313.5万円 |
| 10% | 283.5万円 | 297.0万円 |
| 15% | 267.75万円 | 280.5万円 |
改定後売上 = 改定前売上 ×(1+値上げ率)×(1−注文数の減少率)
売上を維持できる注文数減少の上限
| 値上げ率 | 売上を維持できる注文数減少の上限 |
|---|---|
| 5% | 約4.76% |
| 10% | 約9.09% |
売上維持の上限 = 値上げ率 ÷(1+値上げ率)
粗利で見ると、許される減少幅は広がる
経営で大事なのは売上より利益です。値上げで増えた分はほぼそのまま粗利になるため、粗利を維持できる注文数の減少幅は売上基準より大きくなります。仕入れ値は値上げで変わらないものとして計算します。
粗利維持の上限 = 値上げ率 ÷{(1−原価率)+値上げ率}
| 原価率(値上げ前) | 5%値上げ | 10%値上げ |
|---|---|---|
| 30% | 約6.7% | 約12.5% |
| 35% | 約7.1% | 約13.3% |
| 40% | 約7.7% | 約14.3% |
たとえば原価率35%のお店が10%値上げした場合、注文数の減少が約13.3%までなら、粗利の額は値上げ前と変わりません。ただしこれは粗利の話です。人件費や家賃、光熱費の上昇分まで値上げでまかなうなら、その分は別に計算が必要です。
値上げで見落としやすいLTVと来店頻度
客単価が10%上がっても、来店が月2回から1回になれば、そのお客様からの年間売上は45%減ります。値上げの判断では「1回あたりいくら」だけでなく「1人あたり年間いくら」で見ることが大切です。
LTV(顧客生涯価値)は、お客様との継続的な取引から得られる価値の合計です。ここではわかりやすくするため、「1人あたりの年間売上」を売上ベースのLTVとして扱います。
年間売上LTV = 客単価 × 月の来店回数 × 12
常連客1人を例にした試算(仮定)
| ケース | 客単価 | 来店回数 | 年間売上LTV | 値上げ前との差 |
|---|---|---|---|---|
| 値上げ前 | 3,000円 | 月2回 | 72,000円 | ― |
| 10%値上げ・来店そのまま | 3,300円 | 月2回 | 79,200円 | +10% |
| 10%値上げ・3か月に1回減る | 3,300円 | 年21回 | 69,300円 | −3.75% |
| 10%値上げ・月1回に減る | 3,300円 | 月1回 | 39,600円 | −45% |
「少し減る」と答えた人がどれだけ減らすかで、結果は大きく変わります。年24回が21回になる程度なら、減少は3.75%で済みます。一方、半分になれば年間売上はほぼ半減します。
この表は仮定による計算例です。10%の値上げで来店頻度が半分になるという実測データがあるわけではありません。本来のLTV分析では、継続する期間、粗利、新規客を獲得する費用も加えて考えます。
月の予算が決まっている常連さん1人の場合
外食に使う金額を「月いくらまで」と決めているお客様を想定します。月の予算15,000円、1回3,000円の常連さんで考えます(仮定)。
| 項目 | 値上げ前 | 10%値上げ後 |
|---|---|---|
| 月の予算 | 15,000円 | 15,000円 |
| 1回の利用額 | 3,000円 | 3,300円 |
| 予算内の最大来店回数 | 5回 | 4回 |
| 月間支出(=お店の月間売上) | 15,000円 | 13,200円 |
客単価は10%上がっても、来店が5回から4回になることで、1人あたりの売上は12.0%減ります。月に1,800円、年間で21,600円の減少です。
15,000円÷3,300円=約4.5回のため、予算内では4回しか来られません。余った1,800円は、他のお店や自炊に回る可能性があります。値上げ率が小さくても、予算の「切れ目」をまたぐと来店回数は1回単位で減るということです。
常連客50人で試算:誰も離れていないのに売上が12%減る
今度はお店全体で考えます。月に15,000円の予算で通う常連客が50人いるお店を仮定します。客単価が3,300円になると、15,000円の予算では月5回が入らず、4回に減る計算です。
| 項目 | 値上げ前 | 10%値上げ後 |
|---|---|---|
| 客単価 | 3,000円 | 3,300円 |
| 1人の月間来店回数 | 5回 | 4回 |
| 常連客数 | 50人 | 50人 |
| 月間延べ来店数 | 250回 | 200回 |
| 月間売上 | 750,000円 | 660,000円 |
50人の常連客からの月間売上は90,000円減、年間で108万円減です。この仮定では、誰も離れていないのに売上が12%減ります。
しかも、月に50回分の来店の機会が消えます。来店が減れば、追加注文や口コミ、連れを誘ってくれる機会も減る可能性があります。
ただし、これは予算15,000円を毎月使い切る50人が、全員同じように来店回数を減らした場合の試算です。実際には予算を増やす人、注文内容を変える人、来店回数を保つ人もいます。
本当に見るべきは「利益」
経営判断で大事なのはもう一段先です。値上げで増える利益が、来店が減ることで失う利益を上回るかどうかです。
同じ例を、原価率35%(1回あたりの原価1,050円は値上げ後も変わらない)と仮定して粗利で比べます。
| 項目 | 値上げ前 | 10%値上げ後 |
|---|---|---|
| 1回あたりの粗利 | 1,950円 | 2,250円 |
| 月間延べ来店数 | 250回 | 200回 |
| 月間粗利 | 487,500円 | 450,000円 |
売上は12%減ですが、粗利の減少は37,500円(約7.7%)にとどまります。値上げ前の粗利を保つには、延べ来店が約217回(487,500円÷2,250円)あれば足ります。50人で割ると1人あたり月約4.3回です。
つまりこの例では、減った50回のうち約17回を取り戻せれば(減少を約33回までに抑えれば)、粗利は値上げ前と変わらないということです。値上げと同時に再来店の仕組みを用意する意味は、ここにあります。人件費や光熱費の上昇分までまかなう必要がある場合は、その分も引いて判断します。
常連さんの来店頻度は「売上の土台」
常連さんが多いお店ほど、売上の大きな部分を同じお客様の「繰り返しの来店」が支えています。こうしたお店では、客数の増減よりも来店頻度の小さな下落のほうが、気づかないうちに売上を削ります。レジや予約台帳、会員アプリなどで、お客様ごとの来店回数を追えるようにしておくと、値上げの影響を早くつかめます。
顧客心理から考える値上げの伝え方
既存客は「今の価格」ではなく「前の価格との差」で判断します。だからこそ、値上げの理由を納得できる形で伝えることが大切です。
参照価格:常連さんほど「差額」を意識する
ランチを1,000円から1,100円にした場合、初めて来たお客様は「1,100円のランチ」として評価します。一方で常連さんは「100円上がった」と受け取りやすくなります。この「過去に支払った価格」を基準にする考え方を、行動経済学では参照価格と呼びます。
値上げで反発を受けやすいのは、新規客よりもむしろ常連さんです。常連さん向けに事前に伝える、おなじみのメニューを低い価格帯で残す、といった配慮が効きます。
公平感:「コストが上がったから」は受け入れられやすい
ノーベル経済学賞を受賞したカーネマンらの研究(Kahneman, Knetsch & Thaler, 1986)では、仕入れコストの上昇を価格に転嫁することは公平だと受け止められやすい一方、需要が増えたことに乗じた値上げは不公平だと受け止められやすいことが示されています(出典:Fairness as a Constraint on Profit Seeking: Entitlements in the Market, American Economic Review, 76(4))。
お知らせでは、何のコストがどう上がったのかを具体的に書くほうが、納得を得やすくなります。
伝えるときに入れたい要素
- 改定日(いつから変わるか)
- 対象(全品か、一部のメニューか)
- 理由(何のコストが上がったのか)
- 守るもの(量・質・接客を保つこと)
- 感謝の一言
値上げのお知らせ例文(店頭用)
価格改定のお知らせ
いつもご来店いただき、誠にありがとうございます。
原材料費や光熱費の上昇が続くなか、これまで店内の工夫で価格を据え置いてまいりましたが、品質を保つため、○年○月○日より一部メニューの価格を改定させていただきます。
量や食材はこれまでどおりでご提供します。
今後も変わらない味とおもてなしをお届けできるよう努めてまいります。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
店主
例文の理由の部分は、自店で実際に上がったもの(米、油、野菜、人件費など)に置き換えてください。告知は改定の少なくとも2〜4週間前に始め、常連さんが一度は目にする期間を確保しておくと安心です。
【無料】値上げのお知らせテンプレート(Word・PDF)
そのまま編集して使えるテンプレートを用意しました。登録なしでダウンロードできます。
| 種類 | 内容 | 向いているお店 |
|---|---|---|
| ① レッド | 全品値上げ用。改定日を大きく表示 | ラーメン・定食・焼肉など |
| ② 和風 | 全品値上げ用。明朝体・二重枠 | 和食・寿司・居酒屋・割烹 |
| ③ カフェ | 全品値上げ用。クラフト色のやわらかいデザイン | カフェ・ベーカリー・洋食 |
| ④ 新旧価格表つき | 一部メニュー用。改定前→改定後を8品まで表示 | 値上げする品を絞るお店 |

▶ Word版をダウンロード(DOCX)
▶ PDF版をダウンロード(PDF・手書きで記入して使う形)
そのまま使えるSNS・LINEの告知文(コピーして使えます)
店頭以外での告知に使える文面です。「〇」の部分を自店の内容に書き換えてください。
【価格改定のお知らせ】 いつも〇〇〇〇をご利用いただきありがとうございます。 〇月〇日(〇)より、一部メニューの価格を改定させていただきます。 仕入れ価格の上昇が続くなか、量と味を変えずにお出しするための判断です。 改定後のメニュー表はお店でご覧いただけます。 これからもどうぞよろしくお願いいたします。
〇月〇日(〇)から、一部メニューの価格を改定します。 食材の仕入れ価格が上がるなか、これまで工夫して据え置いてきましたが、同じ量・同じ味を守るために見直すことにしました。 いつも来てくださる皆さまに、心から感謝しています。これからもよろしくお願いします。 #〇〇〇〇 #〇〇グルメ #価格改定のお知らせ
【価格改定のお知らせ】〇月〇日(〇)より、一部メニューの価格を改定いたします。 原材料費の上昇を受け、品質を保つための見直しです。量・味はこれまでどおりです。 改定後の価格はメニューページでご確認いただけます。今後ともよろしくお願いいたします。
いつもありがとうございます。〇月〇日から一部の価格を見直すことになりました。 〇〇さんがよく頼んでくださる〇〇は、量も味もこのままです。これからもよろしくお願いします。
やらないほうがいいこと
- 告知せずに価格を変える
- 量を黙って減らす(気づかれたときの不信感が大きい)
- 値上げと同時に接客や提供スピードが落ちる
値上げ前に取り組みたいリピート改善施策
値上げの前後でやるべきことは、「また来たい」と思われる理由を増やすことと、来店のきっかけを絶やさないことの2つです。

- 料理と接客の質を見直す:MS&Consultingの分析では、料理の美味しさやスタッフの気配りへの満足度が高いほど、値上げ許容度も高い傾向が出ています。
- メニュー構成と原価率を見直す:全品一律ではなく、原価が上がった品や付加価値を付けやすい品から改定します。主力の入口商品は据え置くという選択肢もあります。
- 再来店の仕組みを作る:ポイントカード、会員アプリ、LINE公式アカウントなどで、次の来店理由を用意します。
- 常連さんに先に伝える:店頭より先に、口頭やLINEで常連さんに伝えると、「知らないうちに上がっていた」という不信感を防げます。
- 口コミとお客様の声を確認する:Googleマップやグルメサイトの口コミで、値上げ後に「高い」という声が増えていないかを見ます。
このうち「再来店の仕組み」と「常連さんに先に伝える」は、LINE公式アカウントひとつでまとめて対応できます。友だち追加の時点でショップカードを渡しておけば、値上げの告知も、来店の間隔が空いた人への案内も同じ場所から送れるためです。
会員アプリ利用者の約半数が「来店頻度が上がった」
先ほどのビートレンドの調査では、会員証アプリの利用者のうち「非常に上がった」11%、「少し上がった」36%で、合わせて約半数が来店頻度が上がったと回答しています。残しておきたい会員証アプリの条件は、「ポイント還元率が高い」43%、「会員限定価格などの特典がある」33%、「利用実績に応じた割引クーポンが届く」28%の順でした(出典:ビートレンド株式会社)。
ただし、この調査は会員証アプリを提供する会社が実施したものです。また、「来店頻度が上がったと感じるか」という利用者の実感であり、実際の来店記録ではありません。アプリでなくても、ポイントや常連さん向けの特典を紹介する程度の参考にとどめるとよいでしょう。
リピート改善だけでは解決しないときもある
原価の高騰で利益が出ていないなら、リピート施策を待たずに値上げが必要な場合もあります。値上げを先送りして量や食材を落とすと、満足度が下がり、結果的に値上げ許容度まで下げてしまいます。値上げとリピート改善は、どちらか一方ではなく同時に進めるものです。
値上げを判断するための経営指標
値上げの成否は、客単価だけでなく、客数・来店頻度・粗利を並べて見ると判断できます。値上げの前に「今の数字」を記録し、値上げ後に比べられるようにしておきましょう。
| 指標 | 計算方法 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 客単価 | 売上 ÷ 客数 | 値上げ率どおり上がっているか(注文を控えていないか) |
| 客数 | 来店組数・会計数 | 前年同月と比べる(季節変動を除く) |
| 来店頻度 | 同じお客様の来店回数 ÷ 期間 | 常連さんの来店間隔が広がっていないか |
| 再来店率 | 期間内に2回以上来た人 ÷ 来店した人 | 新規客が常連になっているか |
| 粗利 | 売上 − 原価 | 値上げ前より増えたか |
| 原価率 | 原価 ÷ 売上 | 目標の範囲に戻ったか |
| 口コミ | 件数・評点・「高い」という言及 | 価格への不満が増えていないか |
自店の数字で計算する手順
- 直近3か月の月平均で、売上・客数・客単価・原価率を出す
- 値上げ率を決め、「売上維持の上限」と「粗利維持の上限」を計算する
- 常連さんの来店頻度がどれだけ下がったら上限を超えるかを確かめる
- 値上げ後1か月・3か月の時点で、同じ指標を並べて比べる
値上げ直後は一時的に客数が揺れやすいため、1か月で結論を出さず、前年同月との比較も併せて見ると判断を誤りにくくなります。
値上げシミュレーター:自店の数字で試してみる
客単価、値上げ率、原価率、常連客の人数を入れると、値上げ後の売上と粗利を計算できます。さらに「追加注文」「再来店施策で増える来店」「新規客」などのプラス要素を入れると、値上げだけの場合と値上げ+施策の場合を並べて比べられます。値上げで減る粗利を埋めるのに必要な来店回数や新規客数も表示されます。
① 今のお店の数字と値上げ率
② 値上げと一緒に行う施策(プラス要素)0のままなら「値上げだけ」と同じ結果になります
シミュレーターで「あと何回の来店があれば粗利が戻るか」がわかったら、次はその来店をどう取り戻すかを考えます。常連さんに「次に来る理由」を届ける方法のひとつがLINE公式アカウントです。ショップカード(ポイントカード)やクーポン、値上げのお知らせを、常連さんのスマホに直接届けられます。
よくある質問
Q. 飲食店の値上げは何パーセントまでなら大丈夫?
すべてのお店に当てはまる上限はありません。MS&Consultingの調査では平均+12.5%で「高い」と感じ始める一方、再来店意向の低いお店では+3.9%、「必ずまた来たい」お店では+16.7%と、満足度で大きく変わります。自店の満足度と、粗利を維持できる注文数の減少幅をあわせて考えるのが現実的です。
Q. 値上げすると常連さんは離れますか?
乗り換える人は少数派ですが、来店回数を減らす人は多いと考えておくべきです。ビートレンドの調査では、10%程度の値上げで「他の店に乗り換える」が15%、「少し減るが引き続き利用する」が52%でした。
Q. 値上げは全品一律がいい?一部だけがいい?
原価が上がった品や、価値を付けやすい品から改定する方法があります。常連さんがよく頼む定番品は価格が記憶されやすいため、上げ幅を抑えると反発を少なくできます。
Q. 値上げの告知は必要?
必要です。告知せずに価格を変えると、気づいた常連さんの不信感につながります。理由・改定日・守るものを具体的に伝えましょう。
まとめ|値上げは客単価だけでなく顧客との長期的な関係で判断する
- 値上げで他店に乗り換える人は少数派だが、来店回数を減らす人は多い
- 「また来たい」と思われているお店ほど、値上げを受け入れられやすい
- 10%値上げなら、売上維持の上限は注文数約9.09%減、粗利なら原価率次第で約12〜14%減
- 常連さんの来店頻度は、客単価以上に年間売上を左右する
- 値上げと、料理・接客・再来店の仕組みづくりは同時に進める
値上げそのものは、お店を続けるために必要な判断です。大切なのは「上げるかどうか」より「上げたあとも通ってもらえるか」です。自店の数字で試算し、値上げ後の指標を追いながら判断していきましょう。
値上げ後の「来店を取り戻す仕組み」づくりをお手伝いしています
値上げで減った来店を、LINEで取り戻す仕組みをつくります
シミュレーターで出た「取り戻したい来店回数」を、常連さんへの配信やショップカードで埋めていく。そのための入口から運用までを、お店に合わせて整えます。
- 1友だち追加の入口ホームページやGoogleマップを見た人が、迷わず友だち追加できる置き場所と言葉を設計します。
- 2メニューと受け口リッチメニュー・自動応答・予約や問い合わせの受け口を、お客様の次の行動から逆算して作ります。
- 3自分で配信できる構築して終わりにせず、配信や設定の変更をご自身でできるよう操作方法をご説明します。
「自店の場合は何から始めればいいか」という段階でもご相談いただけます。Googleマップの口コミや評価もあわせて整えたい場合はMEO対策もご覧ください。
参考資料
- ビートレンド株式会社「物価高におけるお店選びの実態調査」(2026年4月14日)
- 株式会社MS&Consulting「客単価でお客様の『値上げ許容度』は変わるのか?」(2023年3月29日)
- 株式会社MS&Consulting「飲食店の価格改定、来店客は『支払金額+12.5%』から高いと感じる?!」(2022年12月7日)
- 株式会社ファンくる「外食における値上げについての意識調査」(2024年12月12日、エキサイトニュース)
- AdverTimes「飲食店の値上げ、7割が理解」(ぐるなび調査、2022年6月15日)
- Kahneman, Knetsch & Thaler (1986) Fairness as a Constraint on Profit Seeking


