障害のある子どもたちが、学校の授業が終わったあとや夏休みなどの長期休暇に通い、生活能力の向上に必要な支援や社会との交流の機会を受ける場が「放課後等デイサービス」です。保育や教育、福祉の現場で経験を積んだ方が、自分の考える支援を形にするために開業を考えることも多いサービスです。
放課後等デイサービスは、児童福祉法にもとづく障害児通所支援のひとつで、事業を行うには都道府県や指定都市、中核市などから「指定」を受ける必要があります。指定を受けるには、法人であること、児童発達支援管理責任者をはじめとする職員をそろえること、指導訓練室などの設備を用意することなど、決められた基準を満たさなければなりません。
この記事では、放課後等デイサービスの開業を考えている方に向けて、法人格の要件、人員基準、設備基準、指定申請の流れと時期を順にまとめました。内容は、兵庫県の指定基準の資料、栃木県と和歌山市の指定申請の案内、新潟県の児童発達支援管理責任者の要件の案内で確認したものです。申請の時期や細かな運用は指定権者ごとに違うため、実際の手続きでは事業所を置く地域の窓口に確認してください。
- 放課後等デイサービスの指定と、法人格の要件
- 児童発達支援管理責任者・児童指導員または保育士・管理者の人員基準
- 児童発達支援管理責任者になるための実務経験と研修
- 指導訓練室などの設備基準
- 事前協議から指定日までの流れと、指定の有効期間
こんな相談をよく受けます
ご相談者「放課後等デイサービスを始めたいけど、どんな資格の人をそろえればいいですか?」



「物件はどのくらいの広さがあれば指定を受けられるのでしょうか」
放課後等デイサービスは、児童発達支援管理責任者などの人員基準と、指導訓練室などの設備基準を満たしたうえで指定申請を行います。自治体によって事前協議が必要な点にも注意が必要です。
放課後等デイサービスの指定とは
放課後等デイサービスでは、利用する子どもの保護者が市区町村から通所受給者証の交付を受け、事業所はサービスの費用のうち保護者の負担分を除いた額を、給付費として請求します。この給付費を受け取るには、事業所ごとに指定権者から指定を受けなければなりません。
和歌山市の申請の手引では、指定の有効期間は指定日から6年間とされ、期間が過ぎたあとも事業を続けるには更新の申請が必要とされています。開業はゴールではなく、指定の基準を守り続けることが前提になる事業です。


法人格が必要
和歌山市の手引では、指定は個人ではなく法人に対して行われ、法人の形態は問わないとされています。株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人、社会福祉法人など、どの形態でも申請できますが、個人事業主のままでは申請できません。
同じ手引では、法人を設立するときに、定款の目的に「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」という文言を必ず入れる必要があるとされています。すでにある会社で新しく始める場合は、事業目的の変更と登記を先に済ませておきましょう。
放課後等デイサービスの人員基準
ここでは、主に重症心身障害児以外の子どもが通う一般的な事業所について、兵庫県の指定基準の資料をもとに整理します。人員・設備の基準は国の基準省令にもとづく全国共通の内容ですが、運用上の細かな目安は指定権者によって異なる場合があります。
児童指導員または保育士:10人までは2人以上
児童指導員または保育士は、サービスを提供する時間を通じて、障害児の数が10人までは2人以上を置きます。10人を超える場合は、2人に、10人を超えて5人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上が必要です。たとえば定員15人なら3人以上、定員20人なら4人以上となります。
機能訓練担当職員を専従で配置している場合は、この合計の人数に含めることができます。ただし、看護職員や機能訓練担当職員を含める場合でも、「児童指導員又は保育士」として数える職員の半数以上は、児童指導員または保育士でなければなりません。また、従業者のうち1人以上は常勤である必要があります。
児童発達支援管理責任者:1人以上(うち1人以上は専任かつ常勤)
児童発達支援管理責任者(児発管)は、子どもと保護者の希望や課題を把握し、個別支援計画を作成して、支援の内容を管理する職員です。兵庫県の資料では、主に重症心身障害児以外を通わせる事業所では1人以上を置き、そのうち1人以上は専任かつ常勤とされています。和歌山市の手引では、管理上支障がない場合は管理者との兼務もできるとされています。
管理者
管理者は、原則としてその事業所の管理の業務に専従する人を置きます。支障がなければ、ほかの職務と兼ねることもできます。
医療的ケアが必要な子どもを受け入れる場合
兵庫県の資料では、医療的ケアが必要な子どもを受け入れる場合は、看護職員の配置が必要とされています。医療機関などとの連携で看護職員を訪問させる場合などは置かないことができるともされています。主に重症心身障害児を通わせる事業所では、嘱託医、看護職員、児童指導員または保育士、機能訓練担当職員をそれぞれ1人以上置くなど、別の基準になります。
児童発達支援管理責任者になるには
開業でもっとも苦労しやすいのが、児童発達支援管理責任者の確保です。児発管になるには、一定の実務経験と、決められた研修の修了が必要です。新潟県の案内をもとに、流れを整理します。
- 実務経験:相談支援や直接支援などの業務を、資格の有無などに応じて決められた年数以上経験していること。新潟県の案内では、児発管の場合、国家資格等にもとづく業務の経験の要件は5年以上とされている
- 基礎研修:児発管としての基礎を学ぶ研修。相談支援従事者初任者研修(講義部分)とあわせて修了すると、2人目以降の児発管として従事できる
- 実践研修:基礎研修などの修了後、受講開始前5年間に通算2年以上の相談支援業務または直接支援業務に従事していることが受講の条件
- 更新研修:実践研修の修了年度の翌年度から、5年ごとに受講する
新潟県の案内では、一定の条件を満たす場合に、実践研修の代わりに6か月以上のOJTで受講要件を満たせる取扱いも示されています。研修の開催時期や受講の条件は都道府県ごとに異なるため、開業の時期から逆算して、児発管を担う人の研修の予定を早めに確認しておきましょう。
放課後等デイサービスの設備基準
兵庫県の資料では、放課後等デイサービスの事業所には、次の設備が必要とされています。
- 指導訓練室:訓練に必要な機械器具などを備えること
- その他の必要な設備:相談室、事務室、手洗い設備、トイレなど
設備は、原則として放課後等デイサービスの事業専用とし、支援に支障がない場合は共用できるとされています。兵庫県の基準の資料では、放課後等デイサービスの指導訓練室について面積の数値は定められておらず、障害児1人あたり2.47㎡以上という基準は児童発達支援センターのものです。ただし指定権者によって運用上の目安を定めている場合があるため、物件を決める前に窓口で確認しましょう。建物の用途や消防設備、バリアフリーへの配慮など、建築基準法や消防法の確認が必要になることもあります。
物件選びで気をつけたいこと
放課後等デイサービスは、子どもたちを学校や自宅に迎えに行き、送り届ける送迎を行う事業所が多くあります。車を停める場所や、乗り降りを安全にできる場所があるかは、物件選びの大切な条件です。また、子どもたちが体を動かす活動をする場合は、近隣への音の配慮も考えておきましょう。
放課後等デイサービスの指定申請の流れ
支援の方針、対象とする子ども、定員、営業日と時間、送迎の有無を整理する
定款の目的に「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」を入れる
設備の基準や広さの目安、建物の用途を確認する
実務経験と研修の修了状況を確認する
児童指導員または保育士を定員に合わせて配置できるようにする
事業計画書や建物の図面を持って指定権者と協議する
期限までに申請書類一式を提出する
人員・設備・運営の基準を確認される
月の1日付けで指定され、利用の契約と支援を始める
申請の期限は指定権者ごとに違う
栃木県の案内では、事前協議は随時行い、申請書の提出は指定を受けようとする月の前々月の末日までとされています。たとえば5月1日付けの指定を受けたい場合は、3月31日までに提出します。和歌山市の手引では、事前協議を事業開始予定月の2か月以上前までに行い、本申請は事業開始予定月の前月の5日までに提出し、審査に問題がなければ事業開始月の1日付けで指定されるとされています。
このように、申請の期限は地域によって大きく違います。物件の契約や職員の採用の時期を決める前に、事業所を置く地域の窓口に、事前協議の予約方法と申請の期限を確認しておきましょう。指定までの期間は給付費が入らないため、家賃や人件費をまかなう運転資金も準備しておく必要があります。
開業の準備では、利用料の受け取り方も決めておきます。利用者負担は月ごとにまとめて口座振替などで受け取る事業所が多いですが、おやつ代や教材費、イベントの実費などを別に受け取る場合は、受け取り方を保護者にわかりやすく説明できるようにしておきましょう。キャッシュレスでの受け取りを検討する場合は、初期費用をかけずに始められる「Airペイ」のような決済サービスが候補になります。
開業前に準備しておきたいこと
運営規程と個別支援計画の仕組みを整える
指定申請では、事業の目的や営業日、定員、利用者負担、緊急時の対応などを定めた運営規程を提出します。開業後は、子どもごとに個別支援計画をつくり、定期的に見直すことが求められます。アセスメントから計画の作成、保護者への説明と同意、モニタリングまでの流れを、書式とあわせて開業前に決めておくと、職員が同じ手順で動けます。
相談支援事業所や学校とのつながりをつくる
放課後等デイサービスの利用は、相談支援事業所がつくる障害児支援利用計画をもとに始まることが多くあります。開業前から、地域の相談支援事業所や、特別支援学校・学級の先生に、事業所の支援の特徴や定員、送迎の範囲を伝えておくと、利用につながりやすくなります。
キャッシュレス決済は必要に応じて用意する
放課後等デイサービスでは、利用者負担は月ごとにまとめて請求し、口座振替や振込で受け取る形が一般的です。また、厚生労働省の案内では、障害児の通所支援の利用者負担は世帯の所得に応じて月の上限額が決まり、生活保護世帯と市町村民税非課税世帯は0円、所得割28万円未満の課税世帯は4,600円、それ以外は37,200円とされています。このように上限額で負担が抑えられる仕組みのため、店舗のように毎回の会計で決済端末を使う場面は多くありません。
一方で、保険給付の対象外となる実費の支払いや、イベントの参加費などを現金で受け取ると、職員の管理の手間が増えます。受け取る金額や回数が多い場合は、キャッシュレスでの受け取りも選択肢になります。
決済端末は、iPadやスマートフォンとカードリーダーで使えるサービスが主流です。代表的なのが「Airペイ」と「Square」で、どちらもカード・電子マネー・QRコードにまとめて対応しています。
サロン・店舗でよく使われている決済端末
よくある質問
- 個人でも放課後等デイサービスを開業できますか?
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指定は法人に対して行われるため、個人事業主のままでは開業できません。法人の形態は問われないため、株式会社や合同会社、NPO法人などを設立し、定款の目的に障害児通所支援事業を入れてから申請します。
- 職員は最低何人必要ですか?
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主に重症心身障害児以外が通う事業所では、児童指導員または保育士を、障害児10人までは2人以上置きます。このほかに、児童発達支援管理責任者を1人以上(うち1人以上は専任かつ常勤)と管理者を置きます。管理上支障がなければ、児発管と管理者は兼務できる場合があります。
- 児童発達支援管理責任者になるにはどうすればいいですか?
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一定年数の実務経験を満たしたうえで、基礎研修と相談支援従事者初任者研修(講義部分)、その後の実践研修を修了する必要があります。実践研修の修了後は5年ごとに更新研修を受けます。経験年数や研修の日程は都道府県の案内で確認してください。
- 申請はいつまでに出せばいいですか?
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指定権者によって違います。栃木県では指定を受けたい月の前々月の末日まで、和歌山市では事業開始予定月の前月の5日までとされ、その前に事前協議が必要です。まず事業所を置く地域の窓口に事前協議の予約をしましょう。
- 指定に有効期間はありますか?
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和歌山市の手引では、指定の有効期間は指定日から6年間とされています。期間が過ぎたあとも事業を続けるには、更新の申請が必要です。
開業準備のご相談はエアライフへ
放課後等デイサービスの立ち上げでは、利用する子どもと保護者に事業所を知ってもらうことと、支援を担う職員を採用することが、どちらも大きな課題です。指定申請の準備と並行して、支援の考え方や1日の過ごし方、送迎の範囲を伝えるホームページや、Googleマップの情報を整えておくと、保護者や相談支援事業所に事業所を見つけてもらいやすくなります。
エアライフでは、開業前のホームページ制作、Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)の整備、求人ページの作成など、開業前後の情報発信をお手伝いしています。子どもの写真の扱いや、支援内容の伝え方など、福祉の事業所ならではの配慮をした発信もあわせてご相談いただけます。
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