うどん屋は、小麦粉と水と塩という身近な材料で主力の商品をつくれる業態です。一方で、麺をゆでるために大量のお湯を沸かし、ゆでた麺を水で締めるため、ほかの飲食店よりも水道とガスを多く使います。
また、うどん屋には、お客様が自分でトレーを持って進む「セルフ式」と、席で注文を受けて運ぶ「フルサービス」があり、どちらを選ぶかで厨房の形も、必要な人数も、開業資金も変わります。自家製麺にするか、製麺所から仕入れるかも大きな分かれ道です。
この記事では、うどん屋の開業資金の目安と内訳、営業スタイルの選び方、自家製麺と許可の関係、資金の集め方、開業までの流れをまとめました。
- うどん屋の開業資金の目安と内訳
- セルフ式とフルサービスの違い
- 自家製麺と仕入れ麺の違い、製麺機と許可の考え方
- 水道・ガスの使用量と物件選びの注意点
- 融資・補助金での資金の集め方と、開業までの流れ
うどん屋開業の相談で多い悩み
ご相談者「製麺機を入れるか、麺を仕入れるかで迷っています。」



「セルフ式とフルサービス、どちらが向いているかわかりません。」
うどん屋は麺の調達方法と提供スタイルで、設備も人件費も変わります。開業資金の内訳とあわせて見ていきましょう。
うどん屋の開業資金はどれくらい必要か
日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」によると、すべての業種を合わせた開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円でした。250万円未満で開業した人が20.1%、250万〜500万円未満が21.7%と、500万円未満の開業も4割を超えています。
うどん屋の場合、この幅のなかで金額を大きく左右するのは、次の3つです。
- 物件の状態:前のお店の厨房設備が残る居抜きか、何もないスケルトンか
- 自家製麺にするかどうか:製麺機を入れるか、製麺所から麺を仕入れるか
- 営業スタイル:セルフ式のカウンターをつくるか、フルサービスで客席を中心にするか
スケルトン物件から厨房をつくると、給排水やガス、排気の工事と厨房機器の購入で費用がふくらみます。反対に、うどん屋やそば屋の居抜き物件なら、ゆで麺機やシンクを引き継げて、費用を抑えられることがあります。
うどん屋の開業資金の内訳


初期費用の内訳
| 項目 | 内容 | うどん屋で金額が変わるポイント |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 保証金(敷金)、礼金、仲介手数料、前家賃 | ロードサイドは駐車場の広さ、駅前は家賃の高さが効いてくる |
| 内装・設備工事費 | 床・壁、給排水、電気、ガス、空調 | 水を多く使うため、給排水の太さとグリストラップが重要 |
| 排気・ダクト工事 | フード、ダクト、換気扇 | ゆで麺機の湯気と天ぷらのフライヤーの熱と油煙を出す必要がある |
| 厨房機器 | ゆで麺機、冷水機・水槽、フライヤー、ガスレンジ、冷蔵庫、製氷機、シンク | ゆで麺機とフライヤーは高額になりやすい |
| 製麺機(自家製麺の場合) | ミキサー、製麺機、のし台、包丁など | 機械にするか手打ちにするか、製麺の量で大きく変わる |
| セルフ式の設備 | セルフカウンター、天ぷらや惣菜の陳列台、トレー | カウンターの長さと保温設備で変わる |
| レジ・券売機 | POSレジ、券売機、キャッシュレス決済端末 | セルフ式はレジを出口側に置くことが多い |
| 備品 | どんぶり、箸、トレー、椅子、テーブル | 席数が多いほど増える |
| 初回仕入れ | 小麦粉や麺、だしの材料、天ぷらの材料、調味料 | 自家製麺か仕入れ麺かで変わる |
| 許可・届出・講習 | 飲食店営業許可の手数料、食品衛生責任者の講習費 | 手数料は自治体ごとに異なる(姫路市は16,000円) |
| 看板・集客の準備 | 看板、のぼり、ホームページ、Googleマップの写真 | ロードサイドは車から見える看板が大事 |
運転資金の内訳
- 家賃・共益費
- 仕入れ代(小麦粉や麺、だしの材料、天ぷらの材料、油)
- 水道光熱費(うどん屋は水道代とガス代が高くなりやすい)
- 人件費
- 決済手数料、通信費、広告費
- 融資の返済
- 自分の生活費
うどんの単価は、ほかの麺類の専門店と比べて低めに設定されることが多く、1杯あたりの利益は大きくありません。そのぶん、多くの杯数を出すことと、天ぷらやおにぎりなどのサイドメニューで客単価を上げることが大切です。売上が安定するまでの半年分ほどの運転資金を、初期費用とは別に用意しておくのが目安です。
セルフ式とフルサービスの違い
うどん屋の営業スタイルは、大きく「セルフ式」と「フルサービス」に分かれます。どちらを選ぶかで、店の形、必要な人数、売上の組み立て方が変わります。
| 比べること | セルフ式 | フルサービス |
|---|---|---|
| 注文と提供 | カウンターで注文し、お客様がトレーで運ぶ。天ぷらなどは自分で取る | 席で注文を受け、スタッフが運ぶ |
| 人の配置 | 麺をゆでる人、盛る人、レジの人が中心。ホールの人数を減らせる | 厨房とホールの両方に人が必要 |
| 客単価 | うどんは低めでも、天ぷらやおにぎりで上げやすい | 定食やセット、お酒などで上げやすい |
| 回転 | 提供が速く、回転を上げやすい | 滞在時間が長くなりやすい |
| 設備 | セルフカウンター、天ぷらの陳列台、保温設備が必要 | 客席と厨房をつなぐ動線が大事 |
| 向いている立地 | ロードサイド、オフィス街、昼の需要が多い場所 | 住宅街、夜の需要もある場所、落ち着いて食べたい客層 |
セルフ式は、少ない人数で多くのお客様をさばける仕組みですが、昼のピークに麺が足りなくなったり、天ぷらが切れたりすると、列が止まってしまいます。ピーク前にどれだけ準備をしておけるか、厨房の広さと人数から逆算しておきましょう。
フルサービスは、ゆっくり食べたいお客様や家族連れ、夜にお酒と一緒に楽しみたいお客様に向いています。そのぶんホールの人件費がかかるため、客単価をどう上げるかを考えておく必要があります。
自家製麺と仕入れ麺
それぞれの特徴
| 種類 | よいところ | 気をつけること |
|---|---|---|
| 自家製麺 | 麺でお店の個性を出せる。「打ちたて」を打ち出しやすい。粉の原価は仕入れ麺より抑えやすい | 製麺機や作業場所が必要。仕込みの時間と人手がかかる。気温や湿度で生地の具合が変わる |
| 仕入れ麺 | 製麺の手間がなく、品質が安定する。初期費用を抑えられる | 麺での差がつけにくい。製麺所との取引条件で原価が決まる |
自家製麺にこだわると、仕込みの時間が長くなり、店主の体の負担も大きくなります。開業時は仕入れ麺で始め、営業に慣れてから自家製麺に切り替える方法もあります。製麺所のなかには、店ごとに麺の太さや配合を相談できるところもあるので、取引先を選ぶ段階で聞いてみてください。
製麺機を入れる場合
自家製麺にする場合は、粉と水を混ぜるミキサー、生地をのばして切る製麺機などをそろえます。手打ちにするなら、のし台や麺切り包丁、生地を寝かせる場所が必要です。
- 1日に何玉つくるかから、機械の能力を選ぶ
- 製麺機を置く場所と、粉を保管する場所を確保する
- 粉が舞うため、客席や調理の場所との区切りを考える
- 機械の電源(電圧)と、床の強さを確認する
自家製麺と許可の関係
うどん屋を開くには、保健所の飲食店営業許可が必要です。飲食店営業は、食品を調理し、または設備を設けてお客様に飲食させる営業です。自治体の手引きでは、ここでいう調理を「その場で客に飲食させるか、短い期間のうちに消費されることを前提にした加工」と説明しているものがあります。
一方で、食品衛生法の営業許可には「麺類製造業」という別の業種があります。そのため、店内で打った麺を自分のお店で調理して出すだけなら飲食店営業の範囲で扱われることが多い一方、生麺をお土産として販売する、ほかのお店に卸す、といった場合は麺類製造業の許可が必要になることがあります。
どこまでが飲食店営業の範囲になるかは、販売の方法や自治体の運用によって変わります。持ち帰り用の麺の販売を考えているなら、工事の前に保健所に相談し、必要な許可と施設の条件を確認してください。麺類製造業の許可をとる場合は、製麺の場所に求められる施設基準も変わります。
水道・ガスと物件選び
水道とガスを多く使う
うどん屋は、ゆで麺機で大量のお湯を沸かし続け、ゆでた麺を冷水で洗って締めます。だしを取るにもお湯を使います。そのため、水道とガスの使用量が多くなりやすい業態です。
- ガス:ゆで麺機、だしの鍋、フライヤーを同時に使っても足りる容量があるか
- 給水:ピーク時に水を多く使っても水圧が落ちないか
- 排水:お湯やでんぷんを含む水を流しても詰まらないか。グリストラップの容量は足りるか
- 排気:ゆで麺機の湯気と、天ぷらの油煙を外に出せるか
居抜き物件でも、前のお店が居酒屋やカフェだった場合は、うどん屋に必要なガスの容量や排水の能力がそろっていないことがあります。物件を契約する前に、設備業者に見てもらい、追加の工事がどれくらい必要かを確認してください。
水道光熱費を計画に入れる
開業前の計画では、水道光熱費を少し多めに見ておくと、オープン後に資金が足りなくなるのを防げます。ゆで麺機の湯は営業中ずっと沸かしておくことが多いため、営業時間の長さも光熱費に影響します。昼だけの営業にするか、夜も営業するかは、光熱費と売上のバランスで考えましょう。
立地とお客様
| 立地 | 主なお客様 | 考えておきたいこと |
|---|---|---|
| ロードサイド | 車で来る家族連れ、仕事中のドライバー | 駐車場の台数と出入りのしやすさが来店を左右する。セルフ式と相性がよい |
| オフィス街 | 会社員の昼休み | 平日の昼に売上が集中する。提供の速さが大事 |
| 住宅街 | 近所の家族、高齢の方 | 常連客が中心になる。お持ち帰りや夜の営業も検討する |
| 駅の近く | 通勤・通学の人、ひとり客 | カウンター中心で回転重視。家賃が高いぶん杯数が必要 |
候補の物件が見つかったら、平日と休日、昼と夜に実際に足を運び、どんな人が歩いているか、どんな車が走っているかを確かめてください。
うどん屋の開業に必要な資格と届出
食品衛生責任者
飲食店を開くには、お店ごとに食品衛生責任者を1人置く必要があります。調理師や栄養士の資格がない場合は、各都道府県の食品衛生協会などが開く1日の講習会を受けると取得できます。
防火管理者
お客様とスタッフを合わせた収容人数が30人以上になるお店では、防火管理者を選任して消防署へ届け出ます。客席の多いうどん屋では対象になることがあります。
必要な届出
| 手続き | 窓口 | いつまでに | ポイント |
|---|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 保健所 | 営業開始前 | 工事の前に図面を持って事前相談すると、やり直しを防げる |
| 麺類製造業許可 | 保健所 | 営業開始前 | 麺を持ち帰り用に販売したり卸したりする場合に必要になることがある。保健所に確認する |
| 防火管理者選任届 | 消防署 | 選任後すみやかに | 収容人数30人以上の場合 |
| 火を使用する設備等の設置届 | 消防署 | 設置前 | 大型のゆで麺機やフライヤーなど、火を使う設備を置く場合に必要になることがある |
| 開業届 | 税務署 | 開業から1か月以内 | 青色申告承認申請書も一緒に出すと節税につながる |
保健所の飲食店営業許可は、シンクの数や手洗い設備、床や壁の材質などの施設基準を満たす必要があります。居抜き物件でも、前のお店の許可を引き継ぐことはできません。自分の名前で新しく許可を取ります。井戸水などを使う場合は、水質検査の結果を求められることがあります。
うどん屋の開業資金を集める方法
自己資金
日本政策金融公庫の同じ調査では、開業時の資金調達額は平均1,219万円で、そのうち金融機関などからの借り入れが67.9%(平均827万円)、自己資金が22.9%でした。融資を受ける場合も、自己資金がどれだけあるかは審査で必ず見られます。
日本政策金融公庫の創業融資
| 制度 | 新規開業・スタートアップ支援資金 |
|---|---|
| 対象 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内) |
申し込みには創業計画書が必要です。うどん屋の場合は「1時間に出せる杯数×営業時間×客単価」で売上の上限を出し、サイドメニューでどれだけ客単価を上げるかも示すと、計画の説得力が増します。
売上見込みの立て方(計算の例)
たとえば、昼の3時間で1時間あたり平均40杯、夜の3時間で1時間あたり平均10杯出せるとすると、1日の杯数は150杯です。うどんとサイドメニューを合わせた客単価が750円なら1日の売上は112,500円、月に25日営業すると約281万円になります。
ここから原価(粉や麺、だし、天ぷらの材料、油)、人件費、家賃、水道光熱費、返済を引いて、手元に残るお金を確認します。数字はあくまで計算の例なので、出店する場所の人通りや近くのお店の価格を調べて、自分のお店に当てはめてください。最初の計画では杯数を低めに見積もっておくと安全です。
補助金・助成金
- 小規模事業者持続化補助金〈創業型〉:市区町村などの「特定創業支援等事業」の支援を受けた、創業間もない小規模事業者が対象です。2026年の第3回公募では補助上限200万円(インボイス特例で50万円上乗せ)、補助率3分の2でした。看板やチラシ、ホームページなど販路開拓の費用に使えます。公募の時期や要件は回ごとに違うため、最新の公募要領を確認してください。
- 市区町村の創業支援:創業セミナーを受けると、登録免許税の軽減や融資の金利優遇を受けられる地域があります。
補助金は、先に自分で支払い、あとから一部が戻ってくる仕組みが基本です。開業前の手元資金にはならないので、融資や自己資金とは分けて考えてください。
個人開業とフランチャイズ
うどん屋は、フランチャイズの本部も多い業態です。フランチャイズは、レシピや麺の供給、オペレーションの仕組みを使える代わりに、加盟金やロイヤリティがかかります。個人開業は自由度が高い一方で、味もオペレーションも自分でつくる必要があります。経験や資金、どんなお店にしたいかで、どちらが合うかを考えてください。
うどん屋開業までの流れ
セルフ式かフルサービスか、客層、客単価、営業時間
ガスの容量、給排水、排気、駐車場
麺の販売をするなら麺類製造業も確認
看板・Googleマップ・ホームページ・SNS
流れのなかで後回しにされやすいのが、カード・電子マネー・QRコード決済の準備です。決済サービスは申し込みから審査、端末の到着までに日数がかかるため、営業許可の申請と同じタイミングで申し込んでおくと、オープン当日から使えます。初期費用をかけずに始めるなら、カード・電子マネー・QRコードにまとめて対応できる「Airペイ」が候補になります。
プレオープンで知り合いを招いて満席の状態をつくり、麺をゆでる、盛る、天ぷらを補充する、会計するという流れが回るかを確かめておくと、オープン直後の混乱を減らせます。
キャッシュレス決済は開業時に用意しておく
うどん屋は昼の短い時間にお客様が集中する業態です。特にセルフ式では、最後のレジで会計が詰まると、後ろの列全体が止まってしまいます。うどんと天ぷらを合わせた細かい金額の会計も、カードや電子マネー、QRコード決済なら、おつりのやりとりがなく素早く済ませられます。昼休みの限られた時間で食べに来る会社員や、現金を持ち歩かないお客様にも選ばれやすくなります。
決済端末は、iPadやスマートフォンとカードリーダーで使えるサービスが主流です。代表的なのが「Airペイ」と「Square」で、どちらもカード・電子マネー・QRコードにまとめて対応しています。審査に時間がかかることもあるので、開業準備の段階で申し込んでおくとオープン当日から使えます。
夜のお店で使われている主な決済端末
開業後に長く続けるためのポイント
ピーク前の準備量を記録する
昼のピークに麺や天ぷらが足りなくなると、提供が止まり、お客様を待たせてしまいます。逆につくりすぎると廃棄が増えます。曜日や天気ごとの杯数を記録し、仕込みの量を調整していきましょう。
Googleマップの情報を整える
うどん屋は、Googleマップで近くのお店を探して来るお客様が多い業態です。営業時間、定休日、メニューと価格、店内と商品の写真、駐車場の有無、支払い方法を正しく載せておくだけで、初めてのお客様が来店を決めやすくなります。
原価と水道光熱費を毎月確認する
小麦粉や油、天ぷらの材料の価格は変動します。原価率と水道光熱費を毎月確認し、計画とずれてきたら、価格やサイドメニュー、営業時間の見直しを早めに検討してください。
よくある質問
- うどん屋は未経験でも開業できますか?
-
必要な資格は食品衛生責任者で、1日の講習で取得できるため、未経験でも開業はできます。ただし、麺やだしの技術に加えて、天ぷらの揚げ方やピーク時のオペレーションにも経験が必要です。開業前にうどん店で働いて学ぶ人も多くいます。
- 自家製麺にするには特別な許可が必要ですか?
-
店内で打った麺を自分のお店で調理して出すだけなら、飲食店営業の許可の範囲で扱われることが多いです。ただし、生麺をお土産として販売したり、ほかのお店に卸したりする場合は、麺類製造業の許可が必要になることがあります。自治体によって扱いが違うため、保健所に確認してください。
- セルフ式とフルサービスはどちらがいいですか?
-
セルフ式は少ない人数で回転を上げやすく、ロードサイドやオフィス街に向いています。フルサービスは客単価を上げやすく、落ち着いて食べたいお客様や夜の需要がある場所に向いています。立地と客層から選んでください。
- うどん屋は水道代やガス代が高いですか?
-
ゆで麺機でお湯を沸かし続け、ゆでた麺を水で締めるため、ほかの飲食店より水道とガスを多く使う傾向があります。物件のガス容量や排水の能力を確認し、計画でも光熱費を多めに見ておきましょう。
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