コーヒースタンドは、テイクアウトや立ち飲みを中心にした小さなコーヒー店です。客席をほとんど置かないため、狭い物件でも始められ、カフェより初期費用を抑えやすいことから、開業を目指す人が増えています。
ただし、小さなお店だからこそ、物件の電気やガス、給排水の条件がそろっていないと、エスプレッソマシンが置けない、保健所の基準を満たせないといった問題が起こります。また、コーヒー1杯の単価は高くないため、売上の組み立て方にも工夫が必要です。
この記事では、コーヒースタンドの開業資金の目安と内訳、物件の選び方、必要な許可と届出、資金の集め方、開業までの流れをまとめました。
- コーヒースタンドとカフェの違い
- コーヒースタンドの開業資金の目安と内訳
- 小さな物件で確認すること(電源・給排水・保健所の基準)
- 飲食店営業許可と、豆を焙煎・販売する場合の手続き
- 融資・補助金での資金の集め方と、開業までの流れ
コーヒースタンド開業の相談で多い悩み
ご相談者「小さな店でも利益が出るのか不安です。」



「エスプレッソマシンにどれくらいお金をかけるべきか迷っています。」
コーヒースタンドは小さく始められる分、立地と機器選びが重要になります。開業資金の内訳から順番に整理します。
コーヒースタンドとは
コーヒースタンドは、カウンターでコーヒーを注文し、持ち帰るか、店先で立ったまま飲むスタイルのお店です。テーブル席を中心にしたカフェや喫茶店とは、お店の広さも、売上のつくり方も違います。
| 比べること | コーヒースタンド | カフェ・喫茶店 |
|---|---|---|
| 広さ | 数坪から始められる | 客席の分だけ広さが必要 |
| 客席 | なし、または数席・立ち飲みのカウンター | テーブル席・ソファ席など |
| メニュー | コーヒーとドリンク中心。焼き菓子などを少し | 食事やデザートまで幅広いことが多い |
| 売上のつくり方 | 短い時間で多くの杯数を出す。豆の販売も組み合わせやすい | 滞在時間が長く、1人あたりの単価を上げやすい |
| 初期費用 | 抑えやすい | 内装や家具で大きくなりやすい |
コーヒースタンドは、お客様の滞在時間が短いぶん、通勤や散歩の途中に毎日立ち寄ってもらえるかが勝負になります。人の流れがある場所を選び、常連のお客様をつくることが、売上の土台になります。
コーヒースタンドの開業資金はどれくらい必要か
日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」によると、すべての業種を合わせた開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円でした。250万円未満で開業した人が20.1%、250万〜500万円未満が21.7%と、500万円未満の開業も4割を超えています。
コーヒースタンドは小さな物件で始められるため、この調査のなかでも比較的小さな金額で開業しやすい業態です。金額を大きく左右するのは、次の3つです。
- 物件の状態:前のお店の設備が残る居抜きか、何もないスケルトンか
- エスプレッソマシンとグラインダー:新品か中古か、リースか。グレードによって価格の幅が大きい
- 焙煎をするかどうか:自家焙煎をするなら焙煎機と排気の設備が必要になる
エスプレッソを出さず、ハンドドリップを中心にするお店なら、マシンの費用を大きく抑えられます。どんなコーヒーを、どんなお客様に出したいかで、必要な設備と金額が決まります。
コーヒースタンドの開業資金の内訳


初期費用の内訳
| 項目 | 内容 | コーヒースタンドで金額が変わるポイント |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 保証金(敷金)、礼金、仲介手数料、前家賃 | 小さな物件でも、駅前や人通りの多い場所は家賃が高い |
| 内装・設備工事費 | カウンター、床・壁、照明、給排水、電気 | マシン用の電源工事、シンクの増設が必要かで変わる |
| エスプレッソマシン | 業務用エスプレッソマシン | グループ数(同時に抽出できる数)とメーカーで価格が大きく違う |
| グラインダー | エスプレッソ用、ドリップ用 | エスプレッソ用とドリップ用を分けると2台以上になる |
| そのほかの機器 | 冷蔵庫、製氷機、浄水器、ケトル、ドリップ器具 | 製氷機はアイスドリンクの量に合わせて選ぶ |
| 焙煎機(自家焙煎の場合) | 焙煎機、排気設備 | 排気や煙の対策が必要で、物件の条件にも関わる |
| 備品・資材 | カップ、ふた、スリーブ、ストロー、紙袋 | テイクアウト中心なので資材が毎日減る。ロゴ入りにするかで変わる |
| 初回仕入れ | コーヒー豆、牛乳、シロップ、焼き菓子 | 豆の仕入れ先と量で変わる |
| 許可・届出・講習 | 飲食店営業許可の手数料、食品衛生責任者の講習費 | 手数料は自治体ごとに異なる(姫路市は16,000円) |
| 看板・集客の準備 | 看板、メニューボード、ホームページ、Googleマップの写真 | 通りから目に入る看板とメニューが大事 |
運転資金の内訳
- 家賃・共益費
- 仕入れ代(豆、牛乳、資材)
- 水道光熱費(マシンは営業中ずっと電源を入れておくことが多い)
- 人件費
- 決済手数料、通信費、広告費
- マシンのメンテナンス費、浄水器のカートリッジ交換
- 融資の返済
- 自分の生活費
コーヒースタンドは1杯の単価が数百円のため、カップやふたなどの資材費が原価に占める割合が意外と大きくなります。豆の原価だけでなく、資材を含めた1杯あたりの原価を計算しておきましょう。売上が安定するまでの半年分ほどの運転資金を、初期費用とは別に用意しておくのが目安です。
費用を抑える方法
- 居抜き物件を使う:前のお店が飲食店なら、シンクや給排水、電気の設備を使える場合がある
- マシンは中古やリースも検討する:中古を選ぶ場合は、整備済みか、修理を頼める業者が近くにあるかを確認する
- メニューを絞る:最初はドリンクの種類を絞り、機器と仕入れを少なくする
- 焙煎は仕入れから始める:自家焙煎は後から始め、最初はロースターから豆を仕入れる
- 間借りやイベント出店で試す:店舗を持つ前に、間借り営業やイベントで味と価格への反応を確かめる方法もある
コーヒースタンドに向いた物件の選び方
人の流れがある場所
コーヒースタンドは、目的地として遠くから来てもらうより、毎日の通り道で立ち寄ってもらう業態です。物件を選ぶときは、広さよりも「その前を誰が、何時に通るか」を重視します。
| 立地 | 来やすいお客様 | 考えておきたいこと |
|---|---|---|
| 駅の近く・オフィス街 | 通勤・通学の人、昼休みの会社員 | 朝と昼に注文が集中する。提供の速さが大事。土日は落ちることもある |
| 住宅街 | 近所の人、散歩中の人、子ども連れ | 常連客が中心になる。豆の販売と相性がよい |
| 商業施設・観光地の近く | 買い物客、観光客 | 休日に強い。季節や天気で客数が変わりやすい |
候補の物件が見つかったら、平日と休日、朝と昼と夕方に実際に足を運び、通る人の数と年齢層を確かめてください。前を通る人が多くても、歩くスピードが速い場所や、立ち止まりにくい場所もあります。
エスプレッソマシンの電源
小さな物件で見落としやすいのが、電気の容量です。業務用のエスプレッソマシンは消費電力が大きく、機種によっては200Vの電源が必要になります。家庭用と同じ100Vのコンセントしかない物件では、電気の契約容量を増やす工事や、200Vの配線工事が必要になることがあります。
- 使いたいマシンの電圧と消費電力を、メーカーや販売店に確認する
- 物件の電気の契約容量と、200Vの電源があるかを確認する
- 製氷機、冷蔵庫、ケトル、グラインダー、空調を同時に使っても足りるかを計算する
- 容量を増やす工事が必要な場合、オーナーの許可がとれるかを確認する
マシンを決めてから物件を探すのではなく、物件の契約前に電気工事の業者やマシンの販売店に図面を見てもらうと、後から「置けない」という事態を防げます。
給排水と保健所の基準
コーヒースタンドでも、飲食店営業の許可を受けるには保健所の施設基準を満たす必要があります。手洗い設備や洗浄用のシンク、床や壁の材質など、基準の中身は自治体によって細かな違いがあります。小さな物件ほど、シンクを置く場所が足りない、給排水の位置が遠いといった問題が起こりやすくなります。
物件を契約する前に、図面を持って保健所に事前相談してください。工事の前に相談しておくと、やり直しを防げます。エスプレッソマシンや浄水器にも給水と排水が必要なので、水まわりの位置もあわせて確認しましょう。
店先の使い方
- 注文を待つ人が並べるスペースがあるか(歩道をふさがないか)
- 立ち飲みのカウンターやベンチを置けるか(道路にはみ出すと許可が必要になる場合がある)
- ごみ箱を置くか、持ち帰りの容器のごみをどうするか
- 看板を出せる場所があるか
コーヒースタンドの開業に必要な資格と届出
食品衛生責任者
飲食店を開くには、お店ごとに食品衛生責任者を1人置く必要があります。調理師や栄養士の資格がない場合は、各都道府県の食品衛生協会などが開く1日の講習会を受けると取得できます。
飲食店営業許可
コーヒーを出すお店も、保健所の飲食店営業許可が必要です。以前は「喫茶店営業」という別の許可がありましたが、2021年6月の食品衛生法の改正で「飲食店営業」に統合されました。今は、コーヒーだけを出すお店も、食事を出すお店と同じ飲食店営業の許可をとります。
許可は、施設の工事が終わる前に申請し、保健所の検査を受けてから交付されます。営業を始める日から逆算して、余裕をもって申請してください。
豆を焙煎・販売する場合
店内でコーヒーを淹れて出すだけでなく、コーヒー豆を焙煎して販売したり、袋に詰めて販売したりする場合は、飲食店営業の許可とは別の手続きが必要になることがあります。
2021年6月の改正で、許可がいらない食品の製造や加工の一部は「営業届出」の対象になりました。届出の業種には「コーヒー製造・加工業(飲料の製造を除く)」が挙げられています。ただし、焙煎した豆をどのように包装して売るか、どこで売るかなどによって、必要な手続きが変わることがあります。豆の販売を考えているなら、どんな作業をするかを整理して、管轄の保健所に確認してください。
また、袋詰めした豆を販売する場合は、食品表示法にもとづく表示(名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法、製造者など)が必要になります。
防火管理者と届出のまとめ
お客様とスタッフを合わせた収容人数が30人以上になるお店では、防火管理者を選任して消防署へ届け出ます。小さなコーヒースタンドでは対象にならないことが多いですが、建物全体の条件によって変わるため、消防署にも確認しておくと安心です。
| 手続き | 窓口 | いつまでに | ポイント |
|---|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 保健所 | 営業開始前 | 工事の前に図面を持って事前相談する |
| 営業届出(豆の焙煎・販売など) | 保健所 | 営業開始前 | 作業の内容によって必要かどうかが変わるため、保健所に確認する |
| 防火管理者選任届 | 消防署 | 選任後すみやかに | 収容人数30人以上の場合 |
| 開業届 | 税務署 | 開業から1か月以内 | 青色申告承認申請書も一緒に出すと節税につながる |
夜にお酒も出す場合で、深夜0時以降も営業するときは、警察署への届出が必要になることがあります。
コーヒースタンドの開業資金を集める方法
自己資金
日本政策金融公庫の同じ調査では、開業時の資金調達額は平均1,219万円で、そのうち金融機関などからの借り入れが67.9%(平均827万円)、自己資金が22.9%でした。融資を受ける場合も、自己資金がどれだけあるかは審査で必ず見られます。
日本政策金融公庫の創業融資
| 制度 | 新規開業・スタートアップ支援資金 |
|---|---|
| 対象 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内) |
申し込みには創業計画書が必要です。コーヒースタンドの場合は、時間帯ごとの杯数と客単価から売上を組み立て、豆の販売など杯数以外の売上も分けて示すと、計画の説得力が増します。
売上見込みの立て方(計算の例)
たとえば、朝の2時間で1時間あたり20杯、昼から夕方の6時間で1時間あたり8杯出せるとすると、1日の杯数は88杯です。客単価が550円なら1日の売上は48,400円、月に25日営業すると121万円になります。
ここに豆の販売を加える場合は、1日に何袋売れるかを別に見込みます。そこから豆と牛乳、資材の原価、家賃、人件費、光熱費、返済を引いて、手元に残るお金を確認します。1人で営業する場合、朝のピークに1時間で何杯作れるかが売上の上限になります。数字はあくまで計算の例なので、出店する場所の人通りや近くのお店の価格を調べて、自分のお店に当てはめてください。
補助金・助成金
- 小規模事業者持続化補助金〈創業型〉:市区町村などの「特定創業支援等事業」の支援を受けた、創業間もない小規模事業者が対象です。2026年の第3回公募では補助上限200万円(インボイス特例で50万円上乗せ)、補助率3分の2でした。看板やチラシ、ホームページなど販路開拓の費用に使えます。公募の時期や要件は回ごとに違うため、最新の公募要領を確認してください。
- 市区町村の創業支援:創業セミナーを受けると、登録免許税の軽減や融資の金利優遇を受けられる地域があります。
補助金は、先に自分で支払い、あとから一部が戻ってくる仕組みが基本です。開業前の手元資金にはならないので、融資や自己資金とは分けて考えてください。
コーヒースタンド開業までの流れ
どんなコーヒーを、誰に、いくらで出すか
人の流れ、電気の容量、給排水の位置
豆の販売をするなら届出も確認
看板・Googleマップ・ホームページ・SNS
流れのなかで後回しにされやすいのが、カード・電子マネー・QRコード決済の準備です。決済サービスは申し込みから審査、端末の到着までに日数がかかるため、営業許可の申請と同じタイミングで申し込んでおくと、オープン当日から使えます。初期費用をかけずに始めるなら、カード・電子マネー・QRコードにまとめて対応できる「Airペイ」が候補になります。
プレオープンでは、知り合いに来てもらって注文が重なる状態をつくり、抽出から提供、会計までの流れを確かめておくと、オープン直後の混乱を減らせます。
キャッシュレス決済は開業時に用意しておく
コーヒースタンドは、1回の会計が少額で、朝の短い時間に注文が集中する業態です。現金のやりとりやおつりの準備に時間がかかると、列が長くなり、急いでいるお客様は別のお店に行ってしまいます。電子マネーやQRコード決済なら、かざすだけで会計が終わるため、ピーク時の回転を上げやすくなります。小さなお店で1人営業をする場合も、現金を扱う回数が減れば、手を洗う回数や衛生面の負担も軽くなります。
決済端末は、iPadやスマートフォンとカードリーダーで使えるサービスが主流です。代表的なのが「Airペイ」と「Square」で、どちらもカード・電子マネー・QRコードにまとめて対応しています。審査に時間がかかることもあるので、開業準備の段階で申し込んでおくとオープン当日から使えます。
夜のお店で使われている主な決済端末
開業後に長く続けるためのポイント
朝のピークを速く回す
通勤の時間帯は、待ち時間が数分延びるだけで、お客様が離れてしまいます。注文から提供までの時間を測り、マシンやグラインダーの位置、カップの置き場、会計の流れを見直してください。モバイルオーダーを取り入れて、注文と会計を先に済ませてもらう方法もあります。
常連のお客様をつくる
コーヒースタンドの売上は、毎日来てくれる常連のお客様に支えられます。ポイントカードやマイカップ割引、季節の豆の入れ替えなど、また来たくなる理由をつくっておきましょう。
Googleマップの情報を整える
初めての土地で「近くのコーヒー」と探す人は、Googleマップを見て来店を決めることが多いです。営業時間、定休日、メニューと価格、店先と商品の写真、テイクアウトや支払い方法の情報を正しく載せておきましょう。
原価と資材費を毎月確認する
コーヒー豆や牛乳、カップなどの資材の価格は変わります。1杯あたりの原価を毎月確認し、計画とずれてきたら、価格やメニューの見直しを早めに検討してください。
よくある質問
- コーヒースタンドは未経験でも開業できますか?
-
必要な資格は食品衛生責任者で、1日の講習で取得できるため、未経験でも開業はできます。ただし、エスプレッソの抽出やミルクの扱いには練習が必要です。開業前にコーヒー店で働く、バリスタのスクールで学ぶといった準備をする人も多くいます。
- 喫茶店営業の許可は必要ですか?
-
喫茶店営業は2021年6月の食品衛生法の改正で飲食店営業に統合されました。今は、コーヒーだけを出すお店も飲食店営業の許可をとります。
- コーヒー豆を焙煎して売るには何が必要ですか?
-
飲食店営業の許可とは別に、保健所への営業届出などが必要になる場合があります。作業の内容によって扱いが変わるため、焙煎や包装、販売の方法を整理して、管轄の保健所に確認してください。袋詰めした豆を売る場合は食品表示も必要です。
- どのくらいの広さがあれば開業できますか?
-
テイクアウト中心なら数坪の物件で開業している例もあります。広さよりも、エスプレッソマシンの電源、シンクを置く場所、給排水の位置など、保健所の基準と機器の条件を満たせるかが大事です。
開業準備のご相談はエアライフへ
エアライフでは、お店のホームページ制作、Googleマップの整備、SNSや求人まで、開業前後の集客をまとめてお手伝いしています。物件選びの段階から、オープン後に集客で困らないための準備をご相談いただけます。
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