猫カフェは、猫と過ごす時間そのものを売るお店です。猫好きのお客様には根強い人気があり、SNSでの発信とも相性のよい業態です。
ただし、一般的なカフェとは準備がまったく違います。猫を見せてお金をいただく以上、動物愛護管理法にもとづく登録が必要です。猫を見せてよい時間にも決まりがあります。飲み物や食べ物を出すなら、飲食店としての許可も別に取らなければいけません。
この記事では、猫カフェの開業に必要な登録と資格、展示時間のルール、飲食を出す場合の注意点、開業資金の目安と内訳、猫の健康管理と感染症対策、オープン前に準備したい決済と集客までをまとめました。
- 猫カフェに必要な第一種動物取扱業(展示)の登録
- 動物取扱責任者になるための要件
- 成猫の展示時間のルール(午後10時までの特例)
- 飲食を出す場合の許可と、猫エリアの分け方
- 開業資金の目安と、初期費用・運転資金の内訳
- キャッシュレス決済と集客の準備
猫カフェ開業の相談で多い悩み
ご相談者「動物取扱業の登録など、手続きがよくわかりません。」



「猫の健康管理や衛生面の費用がどれくらいかかるか不安です。」
猫カフェは飲食と動物の両方の準備が必要な業態です。必要な手続きと費用の内訳をまとめました。
猫カフェの開業に必要な登録と資格
第一種動物取扱業(展示)の登録が必要
猫カフェは、お客様に猫を見せたり、ふれ合わせたりして料金をいただく商売です。動物愛護管理法では、これは第一種動物取扱業の「展示」にあたります。猫を譲渡や販売する場合は「販売」など、別の種別の登録も必要になることがあります。
登録は事業所ごと、種別ごとに行います。申請先は、事業所がある都道府県や政令指定都市などの動物愛護の担当窓口(動物愛護センターや保健所など)です。登録を受ける前に営業を始めることはできません。
たとえば兵庫県西宮市の案内では、登録手数料は1業種につき15,000円、登録の有効期間は5年で、5年ごとに更新が必要です。手数料や必要書類は自治体によって違うため、事業所を置く地域の窓口で確認してください。
動物取扱責任者を事業所ごとに置く
第一種動物取扱業の登録には、事業所ごとに「動物取扱責任者」を1人以上置く必要があります。動物取扱責任者は、その事業所に常勤する職員から選び、ほかの事業所との掛け持ちはできません。
2020年6月の改正動物愛護管理法の施行にともない、要件は厳しくなりました。改正前は「実務経験」「学校の卒業」「資格」のうち1つでよいとされていました。改正後は、千葉市の案内によると、次のAとBを1つずつ、合わせて2つ満たす必要があります(獣医師、愛玩動物看護師の免許があれば、それだけで認められます)。
| 区分 | 要件 | 内容 |
|---|---|---|
| A(経験) | 実務経験 | 開業する種別と同じ種別の業務に、常勤の職員として半年以上たずさわった経験。家で猫を飼っていた経験は含まれない(東京都の案内) |
| A(経験) | 飼養経験 | 1年以上の飼養経験。認められるかどうかは自治体に事前確認が必要 |
| B(知識) | 学校の卒業 | その種別に関する知識と技術を1年以上教える学校などを卒業している |
| B(知識) | 資格 | 公平で専門性のある団体の試験で、知識と技術を証明する資格(愛玩動物飼養管理士など) |
猫が好きで長く飼ってきた人でも、それだけでは要件を満たせない場合があります。開業を考え始めたら、まず猫カフェやペットショップなどで常勤として働く経験を積み、並行して資格の勉強を進めるのが近道です。認められる資格や経験の証明のしかたは自治体ごとに決まっているため、早めに窓口で確認してください。
また、動物取扱責任者は、自治体が行う研修を毎年1回以上受ける義務があります。
飲食を出すなら飲食店営業許可と食品衛生責任者
ドリンクや軽食を出す場合は、食品衛生法にもとづく飲食店営業許可を保健所で取る必要があります。許可を取るには、店ごとに食品衛生責任者を置くことも求められます。食品衛生責任者は、調理師などの資格がなくても、各都道府県の講習会を受ければなることができます。
自動販売機やペットボトルの飲み物を渡すだけにするなど、店内で調理をしない形にする猫カフェもあります。どこまでが許可の対象になるかは、提供のしかたによって変わるため、メニューを決めた段階で保健所に相談してください。
防火管理者と開業届
店の広さや収容人数によっては、防火管理者を選任して消防署に届け出る必要があります。物件が決まったら、管轄の消防署に確認しておきましょう。個人で開業する場合は、税務署に開業届を出し、青色申告承認申請書も一緒に出しておくと、節税の特典を受けられます。
猫カフェの展示時間のルール
原則は午前8時から午後8時まで
動物愛護管理法の施行規則では、犬や猫を展示できる時間は、原則として午前8時から午後8時までとされています。夜遅くまで動物を人目にさらすと、動物の負担になるためです。
成猫は条件つきで午後10時まで展示できる
猫カフェについては、特例があります。環境省の発表によると、2016年6月1日に施行された改正で、生後1年以上の猫(成猫)は、次の条件を満たせば午後8時から午後10時までも展示できるとされています。
- 生後1年以上の猫であること
- 猫が休める場所に自由に移動できる状態で展示すること
- 1日の展示時間が12時間を超えないこと(複数の猫がいる場合は、いちばん早い展示の開始からいちばん遅い終了までで数える)
- 夜間に展示をしない時間は、お客様を猫のいる場所に入れないための対策をとること
- 夜間に展示をしない時間は、お客様と猫をふれ合わせたり、猫を引き渡したりしないこと
生後1年未満の子猫は、この特例の対象になりません。夜まで営業したい場合でも、子猫は午後8時までに展示を終える必要があります。また、たとえば午前10時から展示を始めれば、12時間の上限で午後10時に終わる計算になります。営業時間を決めるときは、この12時間の上限から逆算してください。
夜にバーのような形で営業したい場合も、午後10時より後は猫を展示できません。猫とお客様のいる場所を分ける作りにしておく必要があります。
飲食を出す場合の猫エリアの分け方
猫カフェで飲食を出す場合は、調理をする場所に猫が入らないようにすることが欠かせません。食品を扱う場所に動物の毛やふんが入ると、衛生上の問題になるためです。
- キッチン(調理場)は壁や扉で区切り、猫が入れない作りにする
- 猫とふれ合うエリアと、飲食をするエリアを分ける店もある
- スタッフが猫にさわった後は、手を洗ってから調理する
- 猫のトイレや食事の場所は、調理場から離す
どの程度の区画が必要か、客席で猫とふれ合いながら飲食してよいかは、保健所の判断や店の作りによって変わります。内装の図面ができた段階で、保健所と動物愛護の窓口の両方に相談しておくと、工事のやり直しを防げます。
猫カフェの開業資金はどれくらい必要か
日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」によると、すべての業種を合わせた開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円でした。250万円未満で開業した人が20.1%、250万〜500万円未満が21.7%で、500万円未満の開業が4割を超えています。
猫カフェは、猫が過ごしやすく、においがこもらない店をつくる必要があります。換気の設備、猫が登れるキャットウォーク、逃げ出さないための二重扉など、一般のカフェにはない工事がかかります。飲食を出すなら、厨房の設備も加わります。


初期費用の内訳
| 項目 | 内容 | 金額が変わるポイント |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 保証金、礼金、仲介手数料、前家賃 | 動物を入れてよい物件は少なく、探すのに時間がかかる |
| 内装工事費 | 換気・空調、床・壁の素材、二重扉、キャットウォーク、猫の休憩スペース | 猫の頭数と店の広さ |
| 厨房設備 | シンク、冷蔵庫、手洗い設備(飲食を出す場合) | メニューの内容 |
| 猫用の設備・用品 | ケージ、トイレ、キャットタワー、爪とぎ、食器、空気清浄機 | 猫の頭数 |
| 猫を迎える費用 | 健康診断、ワクチン、不妊去勢手術、マイクロチップ | どこから迎えるか(ブリーダー、保護団体など) |
| 登録・許可 | 第一種動物取扱業の登録手数料、飲食店営業許可の手数料 | 登録手数料は1業種15,000円(西宮市の例) |
| 決済・予約 | キャッシュレス決済端末、予約システム | 初期費用をかけずに始められるサービスもある |
| 集客の準備 | 看板、ホームページ、猫の写真撮影 | SNSは無料で始められる |
運転資金の内訳
- 家賃・共益費
- 猫の食事代、猫砂などの消耗品
- 動物病院の費用(定期の健康診断、ワクチン、急な病気やケガ)
- 水道光熱費(猫のために24時間空調を使うことが多い)
- 人件費(営業時間外の世話も含む)
- 飲食の材料費(飲食を出す場合)
- 決済手数料、予約システムの利用料、広告費
- 自分の生活費
猫カフェは、お店を閉めている日も猫の世話が続きます。休業日や営業時間外にも、食事、トイレの掃除、健康の確認が必要です。人件費と動物病院の費用は、売上に関係なくかかるお金として計画に入れておきましょう。半年分ほどの運転資金を用意しておくと安心です。
売上の計算の例
猫カフェの売上は、主に「入場料(時間料金)×来店数」で考えます。以下は、仮の数字を使った計算の例です。
| 項目 | 計算の例 |
|---|---|
| 1人あたりの平均の支払い(入場料+ドリンク) | 1,800円 |
| 1日の来店数 | 30人 |
| 月の営業日数 | 26日 |
| 月の売上 | 1,800円×30人×26日=1,404,000円 |
ここから家賃、人件費、猫の食事代や病院代、水道光熱費などを引いたものが手元に残ります。猫の負担を考えると、一度に入れるお客様の数には上限を設けることになります。席数と回転を考えて、無理のない料金を決めましょう。
猫の健康管理と感染症対策
猫を迎えるときの確認
猫を迎えたら、動物病院で健康診断を受け、ワクチン接種や寄生虫の駆除を済ませてから店に出すのが基本です。新しく迎えた猫は、しばらくほかの猫と分けて様子を見ると、病気がうつるのを防げます。
お客様への衛生のお願い
- 入店時と退店時に手を洗ってもらう
- 猫を無理に抱っこしない、寝ている猫を起こさないなどのルールを決める
- 猫に人の食べ物を与えないよう案内する
猫からうつる病気もあるため、お客様にも手洗いや消毒をお願いし、店内は毎日掃除と消毒をします。猫の体調が悪いときは展示を休ませ、すぐに動物病院に相談できるよう、近くのかかりつけの病院を決めておきましょう。
猫が休める場所をつくる
展示時間の特例の条件にもあるとおり、猫が自分で休める場所に移動できることは大切です。お客様の手が届かない高い場所や、裏の休憩スペースをつくっておくと、猫のストレスを減らせます。
猫の迎え方と保護猫カフェ
猫カフェの猫は、ブリーダーやペットショップから迎える方法と、保護団体などから保護猫を迎える方法があります。保護猫を迎えて、お客様に里親として譲る「保護猫カフェ」の形をとるお店もあります。
保護猫の譲渡を行う場合は、展示とは別の種別の登録が必要になることがあるため、どのような形で譲るのかを動物愛護の窓口に相談してください。猫ごとに健康状態や性格が違うため、迎える前に動物病院で健康状態を確認し、ほかの猫との相性も見ながら、少しずつ店に慣らしていきます。
猫の頭数は、店の広さとスタッフの数で無理なく世話ができる範囲に抑えることが大切です。頭数が多すぎると、猫のストレスやけんか、病気のリスクが高まり、世話の手間と費用も大きくなります。
猫カフェの開業資金を集める方法
自己資金
日本政策金融公庫の同じ調査では、開業時の資金調達額は平均1,219万円で、そのうち金融機関などからの借り入れが67.9%(平均827万円)、自己資金が22.9%でした。猫カフェは、猫の病気など予想外の出費が起きやすい業態です。借り入れだけに頼らず、自己資金を厚めに用意しておくと安心です。
日本政策金融公庫の創業融資
| 制度 | 新規開業・スタートアップ支援資金 |
|---|---|
| 対象 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内) |
創業計画書では、動物取扱責任者の要件を満たしていること、猫の健康管理の体制、展示時間のルールにそった営業時間と売上の見込みを示すと、計画の実現性が伝わりやすくなります。
補助金
小規模事業者持続化補助金〈創業型〉は、市区町村などの「特定創業支援等事業」の支援を受けた、創業間もない小規模事業者が対象です。2026年の第3回公募では補助上限200万円(インボイス特例で50万円上乗せ)、補助率3分の2でした。看板やチラシ、ホームページの制作などの販路開拓に使えます。公募の時期や条件は回ごとに変わるため、最新の公募要領を確認してください。
猫カフェの開業までの流れ
実務経験・資格
飲食を出すか、猫の種類、料金の決め方、保護猫の譲渡をするか
換気、近隣、消防の条件も確認
流れのなかで後回しにされやすいのが、カード・電子マネー・QRコード決済の準備です。決済サービスは申し込みから審査、端末の到着までに日数がかかります。第一種動物取扱業の登録や飲食店営業許可の申請と同じタイミングで申し込んでおくと、オープン当日から使えます。初期費用をかけずに始めるなら、カード・電子マネー・QRコードにまとめて対応できる「Airペイ」が候補になります。
キャッシュレス決済は開業時に用意しておく
猫カフェは、滞在時間によって料金が変わるお店が多く、延長料金やドリンクの追加、猫のおやつ、グッズの購入などで、お会計が退店まで決まりません。カードやQRコードで払えると、延長やおやつの追加を気軽に頼んでもらいやすくなります。
また、猫カフェには観光客や遠方からのお客様も訪れます。旅行中の人は、現金をあまり持ち歩かずにカードやスマートフォンで払うことが多くなっています。キャッシュレス決済は、開業の時点で使えるようにしておきましょう。
レジまわりは、猫がいるエリアとは分けて設置すると、お会計のときに扉の開け閉めで猫が逃げ出す心配を減らせます。決済端末は、iPadやスマートフォンとカードリーダーで使えるサービスが主流で、代表的なのが「Airペイ」と「Square」です。予約システムやモバイルオーダーと組み合わせられるかどうかも、選ぶときのポイントになります。
夜のお店で使われている主な決済端末
開業前に準備したい集客
猫の紹介をSNSで発信する
猫カフェは、「この猫に会いたい」という気持ちが来店のきっかけになります。猫ごとの名前、年齢、性格を写真や動画で紹介すると、お気に入りの猫をつくって通ってくれるお客様が増えます。オープン前から、猫が店に慣れていく様子を発信するのも効果的です。
Googleマップに店の情報を載せる
「近くの猫カフェ」を探す人は、Googleマップで店を比べています。営業時間、料金のしくみ、予約の要否、年齢制限などのルール、キャッシュレス決済が使えることを載せておくと、初めてのお客様が来店を決めやすくなります。
ホームページに料金とルールを載せる
猫カフェは、料金のしくみや、猫とのふれ合い方のルールがお店ごとに違います。ホームページに料金表とルール、猫の紹介、予約の方法をまとめておくと、来店前の不安を減らし、当日の説明の手間も省けます。
よくある質問
- 猫カフェを開くのに資格は必要ですか?
-
第一種動物取扱業(展示)の登録と、事業所ごとの動物取扱責任者が必要です。2020年の改正後は、半年以上の実務経験などの「経験」と、学校の卒業や認められた資格などの「知識」を、1つずつ満たす必要があります。飲食を出すなら、飲食店営業許可と食品衛生責任者も必要です。
- 猫カフェは何時まで営業できますか?
-
猫の展示は原則として午前8時から午後8時までです。生後1年以上の猫は、休める場所に自由に移動できる状態で展示し、1日の展示時間が12時間を超えないなどの条件を満たせば、午後10時まで展示できます。
- 飲み物を出さない猫カフェもありますか?
-
あります。店内で調理をしない形にすると、厨房の設備を小さくできます。ただし、どこまでが飲食店営業許可の対象になるかは提供のしかたで変わるため、保健所に相談してください。
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