居酒屋は、料理とお酒の両方で売上をつくれる業態です。お酒は料理に比べて原価率が低いことが多く、うまく組み立てれば利益を出しやすいといわれます。その一方で、席数が多く、厨房とホールの両方に人手がいるため、開業資金も運転資金もしっかり見積もっておく必要があります。
この記事では、居酒屋の開業資金の目安と内訳、費用を抑える方法、資金の集め方、必要な資格と届出、開業後に長く続けるためのポイントをまとめました。
- 居酒屋の開業資金の目安と内訳
- 居抜き物件などで費用を抑える方法
- 融資・補助金での資金の集め方
- 必要な資格(食品衛生責任者・防火管理者)と届出
- 開業後に資金が尽きないための考え方
居酒屋開業の相談で多い悩み
ご相談者「居抜き物件にするか、スケルトンから作るかで迷っています。」



「席数と人件費のバランスがわかりません。」
居酒屋は物件と人の配置で利益が大きく変わります。開業資金の内訳から、席数と人員の考え方まで整理していきます。
居酒屋の開業資金はどれくらい必要か
日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」によると、すべての業種を合わせた開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円でした。250万円未満で開業した人が20.1%、250万〜500万円未満が21.7%で、500万円未満の開業が4割を超えています。
居酒屋の場合は、席数と物件の状態で金額が大きく変わります。10席ほどのカウンター中心の小さなお店と、座敷や個室のある40席以上のお店とでは、必要な広さも、厨房設備も、スタッフの数も違います。スケルトン物件から内装をつくるのか、前のお店の設備が残る居抜き物件を使うのかでも、初期費用は数百万円単位で変わります。
初期費用と運転資金の2つに分けて考える
開業資金は、オープンまでにかかる「初期費用」と、オープン後に売上が安定するまでお店を回す「運転資金」に分けて考えます。居酒屋は常連客がつくまでに時間がかかることが多く、運転資金が足りなくなって閉店するケースも少なくありません。
居酒屋の開業資金の内訳


初期費用の内訳
| 項目 | 内容 | 金額が変わるポイント |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 保証金、礼金、仲介手数料、前家賃 | 繁華街や駅前ほど家賃と保証金が高い |
| 内装・設備工事費 | 客席、座敷・個室、照明、給排水、電気、ガス、空調 | 居抜きかスケルトンか、個室をつくるか |
| 排気・ダクト工事 | フード、ダクト、換気扇 | 焼き物や揚げ物が多いほど排気の能力が必要 |
| 厨房機器 | ガスレンジ、フライヤー、焼き台、冷蔵庫、製氷機、食器洗浄機 | メニューの数と種類で必要な機器が変わる |
| ドリンク設備 | ビールサーバー、ドリンク用冷蔵庫 | ビールサーバーは酒販店やメーカーから借りられることもある |
| 備品 | 食器、グラス、テーブル、椅子、座布団 | 席数が多いほど増える |
| 初回仕入れ | 食材、酒類、調味料 | メニューの品数と酒類の品ぞろえ |
| 許可・届出・講習 | 飲食店営業許可の手数料、食品衛生責任者の講習費 | 手数料は自治体ごとに異なる(姫路市は16,000円) |
| 決済・レジ | POSレジ、キャッシュレス決済端末 | 初期費用をかけずに始められるサービスもある |
| 集客の準備 | 看板、ホームページ、Googleマップの写真、グルメサイト | 宴会の予約を取るなら、オープン前から情報を出しておく |
運転資金の内訳
- 家賃・共益費
- 食材・酒類の仕入れ代
- 人件費(ホールと厨房のスタッフ)
- 水道光熱費
- 決済手数料、グルメサイトの掲載料、広告費
- 融資の返済
- 自分の生活費
居酒屋は、売上に対する食材費と人件費の割合が大きくなりやすい業態です。特に人件費は、お客様が少ない日でも一定額がかかります。オープン後の売上が読みにくい時期を乗り切るため、少なくとも半年分の運転資金を初期費用とは別に用意しておくと安心です。
不動産の仕事をしていたころ、新しく出店したお店が1〜2年で集客できずに閉店していくのを何度も見てきました。料理の味や店の雰囲気がよくても、売上が軌道に乗る前に手元のお金が尽きてしまうケースが目立ちます。開業資金は、オープンする日ではなく、お店が黒字になる日までを見て計算してください。
居酒屋の開業資金を抑える方法
居抜き物件を選ぶ
居酒屋は閉店と開店が多い業態なので、繁華街や駅の近くでは居酒屋の居抜き物件が比較的見つかりやすい傾向があります。厨房設備やカウンター、座敷、ダクトが残っていれば、工事費と機器の購入費を大きく減らせます。
ただし、居抜き物件には注意点もあります。
- 設備が古く、すぐに故障して買い替えになる
- 前のお店の雰囲気や評判が残っている
- 造作譲渡料として、設備代を別に請求されることがある
- リース品が残っていて、契約の引き継ぎが必要になる
- 厨房の配置が、自分のメニューや動線に合わない
契約の前に、譲り受ける設備を一つずつ動かして確認し、リース契約の有無と、前のお店が閉店した理由も聞いておくと安心です。
席数とメニューを絞って始める
最初から大きなお店にすると、家賃も人件費もかさみます。カウンターと少しのテーブル席で始め、メニューも看板料理を中心に絞れば、仕入れと仕込みの負担を減らせます。常連客がついてから広げても遅くはありません。
中古の厨房機器やリースを使う
冷蔵庫や製氷機、ガスレンジなどは、中古の業務用機器やリースを使うと初期費用を抑えられます。ビールサーバーは、仕入れ先の酒販店やビールメーカーから貸し出しを受けられることもあるので、取引条件を聞いてみてください。
居酒屋の開業資金を集める方法
自己資金
日本政策金融公庫の同じ調査では、開業時の資金調達額は平均1,219万円で、そのうち金融機関などからの借り入れが67.9%(平均827万円)、自己資金が22.9%でした。融資の審査では、自己資金がどれだけあるかが必ず見られます。
日本政策金融公庫の創業融資
| 制度 | 新規開業・スタートアップ支援資金 |
|---|---|
| 対象 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内) |
売上見込みの立て方(計算の例)
居酒屋の売上は「席数×満席率×回転数×客単価×営業日数」で考えます。たとえば24席のお店で、平均の満席率が5割、1晩の回転数が1.2回、客単価が3,500円なら、1日の売上は24×0.5×1.2×3,500円=50,400円です。月に25日営業すると、月の売上は約126万円になります。
ここから食材・酒類の原価、人件費、家賃、光熱費、返済を引き、手元に残るお金を確認します。数字はあくまで計算の例なので、出店する場所の相場や近くのお店の価格を調べて、自分のお店に当てはめてください。
補助金・助成金
- 小規模事業者持続化補助金〈創業型〉:市区町村などの「特定創業支援等事業」の支援を受けた、創業間もない小規模事業者が対象です。2026年の第3回公募では補助上限200万円(インボイス特例で50万円上乗せ)、補助率3分の2でした。看板やチラシ、ホームページなどの販路開拓に使えます。公募の時期は回ごとに違うため、最新の公募要領を確認してください。
- 市区町村の創業支援:創業セミナーを受けると、登録免許税の軽減や融資の金利優遇を受けられる地域があります。
補助金は先に自分で支払い、あとから一部が戻る仕組みが基本です。開業前の手元資金にはならないので、融資や自己資金とは分けて考えてください。
居酒屋の開業に必要な資格
食品衛生責任者
飲食店を開くには、お店ごとに食品衛生責任者を1人置く必要があります。調理師や栄養士などの資格がない場合は、各都道府県の食品衛生協会などが開く1日の講習会を受けると取得できます。
防火管理者
お客様とスタッフを合わせた収容人数が30人以上になるお店では、防火管理者を選任して消防署へ届け出ます。居酒屋は席数が多くなりやすいので、物件を決める段階で収容人数を確認しておいてください。
なお、お店で開栓したお酒をグラスやジョッキで出すだけなら、酒類販売業免許はいりません。未開栓のお酒を持ち帰り用に売る場合は免許が必要です。
居酒屋の開業に必要な届出
| 手続き | 窓口 | いつまでに | ポイント |
|---|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 保健所 | 営業開始前 | 工事の前に図面を持って事前相談すると、やり直しを防げる |
| 防火管理者選任届 | 消防署 | 選任後すみやかに | 収容人数30人以上の場合 |
| 深夜酒類提供飲食店営業の届出 | 管轄の警察署 | 営業開始の10日前まで | 深夜0時から日の出までの時間にお酒を主に出して営業する場合 |
| 開業届 | 税務署 | 開業から1か月以内 | 青色申告承認申請書も一緒に出すと節税につながる |
深夜0時以降も営業するか
居酒屋でも、深夜0時から日の出までの時間にお酒をメインに出して営業する場合は、警察署への届出が必要です。この届出ができる場所には用途地域などの制限があります。深夜営業を考えているなら、物件を契約する前にその場所で営業できるかを確認してください。
また、スタッフがお客様の隣に座って会話やお酌をする「接待」をする場合は、風俗営業許可が必要になります。一般的な居酒屋の接客とは扱いが違うので注意してください。
居酒屋の開業までの流れ
料理のジャンル、客層、客単価、宴会を受けるか
居抜きか、席数、深夜営業ができる場所か
看板・Googleマップ・ホームページ・グルメサイト・SNS
流れのなかで後回しにされやすいのが、カード・電子マネー・QRコード決済の準備です。決済サービスは申し込みから審査、端末の到着までに日数がかかるため、営業許可の申請と同じタイミングで申し込んでおくと、オープン当日から使えます。初期費用をかけずに始めるなら、カード・電子マネー・QRコードにまとめて対応できる「Airペイ」が候補になります。
キャッシュレス決済は開業時に用意しておく
居酒屋は、宴会や複数人での来店が多く、会計の金額が大きくなりやすい業態です。カードやQRコード決済が使えないと、幹事の方が困ったり、2軒目に選ばれにくくなったりします。割り勘の会計を早くするためにも、キャッシュレス決済は開業の時点で使えるようにしておくのがおすすめです。
決済端末は、iPadやスマートフォンとカードリーダーで使えるサービスが主流です。代表的なのが「Airペイ」と「Square」で、どちらもカード・電子マネー・QRコードにまとめて対応しています。
夜のお店で使われている主な決済端末
開業後に長く続けるためのポイント
常連客をつくる仕組みを用意する
居酒屋の売上を支えるのは常連客と宴会のお客様です。ショップカード、LINE公式アカウント、ボトルキープなど、一度来てくれたお客様にもう一度来てもらう仕組みを、オープン前から用意しておきます。
Googleマップとグルメサイトの情報を整える
お店を探す人は、Googleマップやグルメサイトで料理の写真、価格、口コミ、個室の有無、予約のしやすさを比べています。情報をこまめに更新し、口コミにはていねいに返信すると、初めてのお客様の安心につながります。
原価率と人件費を毎月確認する
食材の価格や人件費は、気づかないうちに上がっていきます。月ごとに売上、原価率、人件費率を確認し、計画とのずれを早めに見つけてください。メニューの価格や構成、シフトの見直しは、数字を見ながら判断すると迷いが減ります。
よくある質問
- 居酒屋は未経験でも開業できますか?
-
食品衛生責任者は1日の講習で取得できるため、資格の面では未経験でも開業できます。ただし、料理の腕だけでなく、仕入れ、原価管理、スタッフの採用と教育まで必要になります。開業前に飲食店で働き、店の回し方を学んでおく人が多くいます。
- 居酒屋の居抜き物件は見つけやすいですか?
-
繁華街や駅の近くでは、居酒屋の居抜き物件が比較的出やすい傾向があります。ただし、設備の状態やリース契約の有無、前のお店の閉店理由を必ず確認してください。
- 深夜まで営業するのに必要な手続きは?
-
深夜0時から日の出までの時間にお酒をメインに出す場合は、営業開始の10日前までに警察署へ深夜酒類提供飲食店営業の届出をします。営業できる場所に制限があるので、物件を決める前に確認してください。
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