整体院は、手技を中心に、体の不調やこりを感じている人の体を整える施術を行うお店です。整体そのものには国家資格がなく、資格がなくても開業できます。施術ベッドが1台あれば始められるため、自宅の一室やマンションの一室から、ひとりで開く人も多い業態です。
その一方で、整体院のまわりには、あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師などの国家資格があります。無資格でできることとできないことの線引き、名乗り方や広告の表現を知らないまま開業すると、法律違反やお客様とのトラブルにつながります。
この記事では、整体院の開業資金の目安と内訳、開業の形態、資金の集め方、資格と法律の注意点、広告の表現、開業までの流れ、長く続けるためのポイントをまとめました。
- 整体院の開業資金の目安と内訳
- 自宅・マンション・テナント・出張の違い
- 融資・補助金での資金の集め方
- 国家資格との違いと、無資格でできないこと
- 施術所の届出、広告の注意点、賠償責任保険
整体院開業の相談で多い悩み
ご相談者「国家資格がなくても整体院を開いていいのか不安です。」



「広告で「治る」と書いてはいけないと聞いたのですが、どこまで書けますか。」
整体院は、国家資格の施術との違いと広告の表現を理解しておくことが大切です。開業資金の内訳とあわせて見ていきましょう。
整体院の開業資金はどれくらい必要か
日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」によると、すべての業種を合わせた開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円でした。250万円未満で開業した人が20.1%、250万〜500万円未満が21.7%で、500万円未満の開業が4割を超えています。
整体院は、大きな機械がなくても始められる業態です。自宅の一室で施術ベッド1台から始めるなら、物件の費用はほとんどかかりません。一方、駅の近くでテナントを借り、受付や待合、複数の施術スペースをつくるなら、数百万円以上になることもあります。開業資金は、どこで開くかと、どこまで設備を整えるかで大きく変わります。
初期費用と運転資金の2つに分けて考える
開業資金は、オープンまでにかかる「初期費用」と、オープン後に売上が安定するまで院を回す「運転資金」に分けて考えます。整体院は、技術を知ってもらい、通っていただくお客様が増えるまでに時間がかかります。開業直後は集客のための広告費もかかるので、運転資金を別に用意しておくことが欠かせません。
開業の形態で費用が変わる
| 形態 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自宅開業 | 物件の費用がかからず、家賃の負担もない | 住所を公開することへの不安、家族の生活との区切り。賃貸や分譲マンションは契約・管理規約の確認が必要 |
| マンションの一室 | テナントより家賃を抑えやすく、落ち着いた空間をつくれる | 事業での利用や看板の設置が認められているか、契約前に確認が必要 |
| テナント(店舗物件) | 看板を出せて、通りがかりのお客様にも気づいてもらえる | 保証金・家賃・内装費が高くなりやすい |
| レンタルサロン | 時間単位で借りられ、物件の契約がいらない | 予約できる時間が限られる。常連のお客様が増えると割高になることもある |
| 出張整体 | 店舗を持たずに始められる | 移動時間と交通費がかかる。持ち運べる施術ベッドが必要 |
| フランチャイズ | 技術研修や集客の仕組みを本部が用意している | 加盟金やロイヤリティ、契約期間、独立後の競業の制限を確認する |
整体院のお客様には、腰や膝の痛みを抱えている方や、年齢を重ねた方もいます。どの形態でも、階段の多さや駐車場の有無など、体がつらい方でも通いやすいかを考えて場所を選びましょう。
整体院の開業資金の内訳


初期費用の内訳
| 項目 | 内容 | 金額が変わるポイント |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 保証金、礼金、仲介手数料、前家賃 | 自宅かマンションかテナントか、立地 |
| 内装工事費 | 壁・床・照明、施術スペースの仕切り、受付・待合、更衣スペース | 施術スペースの数、居抜き物件かどうか |
| 施術ベッド・器具 | 施術ベッド、枕、タオル、姿勢を確認する鏡など | 台数、電動ベッドを入れるか |
| 設備・家具 | 受付カウンター、待合の椅子、ロッカー、空調 | 院の雰囲気づくりにどこまでこだわるか |
| 消耗品 | フェイスペーパー、タオル、施術着、消毒用品 | 施術人数 |
| 技術の習得 | 整体スクールや講習会、民間資格の費用 | 未経験か、すでに施術経験があるか |
| 決済・予約 | キャッシュレス決済端末、予約システム | 初期費用をかけずに始められるサービスもある |
| 集客の準備 | ホームページ、Googleマップの写真、SNS、チラシ、看板 | オープン前から情報を出しておくと立ち上がりが早い |
整体院は、機器よりも物件と内装で金額の差が出やすい業態です。清潔感と、プライバシーが守られる空間は欠かせませんが、最初から内装にお金をかけすぎると、運転資金が足りなくなります。まずは必要な設備を見極めることが大切です。
運転資金の内訳
- 家賃・共益費
- 消耗品の仕入れ代、タオルの洗濯代
- 水道光熱費
- 人件費(スタッフを雇う場合)
- 広告費、予約サイトの掲載料
- 決済手数料、予約システムの月額料金
- 賠償責任保険の保険料
- 融資の返済、自分の生活費
オープン後の売上が読みにくい時期を乗り切るため、少なくとも半年分の運転資金を初期費用とは別に用意しておくと安心です。開業資金は、オープンする日ではなく、院が黒字になる日までを見て計算してください。
整体院の開業資金を抑える方法
小さく始めて、あとから広げる
自宅やマンションの一室、レンタルサロンで始めれば、物件取得費と内装費を大きく抑えられます。施術ベッドが1台あれば、ひとりで営業を始められます。予約が埋まるようになってから、テナントへの移転やスタッフの採用を考えても遅くはありません。
居抜き物件を探す
テナントで開業する場合は、前の店の内装や設備が残った「居抜き物件」を探す方法があります。整体院やサロン、治療院の居抜きなら、仕切りや照明、受付をそのまま使えることがあります。ただし、残っている設備の状態や、譲渡の条件、原状回復の範囲を契約前に確認してください。
設備は必要なものから順にそろえる
施術ベッドや家具は、最初から高価なものをそろえる必要はありません。中古品やリースも含めて比べ、お客様の反応を見ながら少しずつ整えていくと、無駄な出費を減らせます。
整体院の開業資金を集める方法
自己資金
日本政策金融公庫の同じ調査では、開業時の資金調達額は平均1,219万円で、そのうち金融機関などからの借り入れが67.9%(平均827万円)、自己資金が22.9%でした。融資の審査では、自己資金がどれだけあるか、どのように貯めてきたかが必ず見られます。
日本政策金融公庫の創業融資
| 制度 | 新規開業・スタートアップ支援資金 |
|---|---|
| 対象 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内) |
融資を申し込むときは、事業計画書を出します。整体院や治療院で働いた経験、どんなお客様にどんな施術を提供するのか、いくらの売上を見込むのかを、具体的に書けるようにしておきましょう。
売上見込みの立て方(計算の例)
整体院の売上は「1日の施術人数×客単価×営業日数」で考えます。ひとりで営む院で、1日に平均5人、客単価が6,000円なら、1日の売上は5人×6,000円=30,000円です。月に22日営業すると、月の売上は約66万円になります。
ここから家賃、光熱費、消耗品、広告費、保険料、返済を引き、手元に残るお金を確認します。整体は、施術者が自分の手で施術するため、1日に受けられる人数に限りがあります。施術時間と、施術の間の休憩や片付けの時間も含めて、無理のない予約の枠を考えましょう。数字はあくまで計算の例です。出店する地域の相場や、近くの整体院の価格を調べて、自分の院に当てはめてください。
補助金・助成金
- 小規模事業者持続化補助金〈創業型〉:市区町村などの「特定創業支援等事業」の支援を受けた、創業間もない小規模事業者が対象です。2026年の第3回公募では補助上限200万円(インボイス特例で50万円上乗せ)、補助率3分の2でした。チラシやホームページなどの販路開拓に使えます。公募の時期や条件は回ごとに違うため、最新の公募要領を確認してください。
- 市区町村の創業支援:創業セミナーを受けると、登録免許税の軽減や融資の金利優遇を受けられる地域があります。
補助金は先に自分で支払い、あとから一部が戻る仕組みが基本です。開業前の手元資金にはならないので、融資や自己資金とは分けて考えてください。
整体院の開業に資格は必要か
整体には国家資格がない
「整体」や「整体師」という国家資格はありません。そのため、資格がなくても整体院を開業できます。民間の団体が認定する資格やスクールの修了証はありますが、取得は必須ではありません。ただし、お客様の体にふれ、痛みのある部位を扱う仕事です。スクールや講習、整体院での勤務で、技術と体の知識を身につけてから開業するのが一般的です。
整体と国家資格の違い
整体院とよく比べられるのが、国家資格を持つ人が開く施術所です。違いを整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 資格 | 主な施術 | 保健所への施術所の届出 |
|---|---|---|---|
| 整体院 | 国家資格はない(民間資格のみ) | 手技で体を整える施術 | 不要 |
| あん摩マッサージ指圧の施術所 | あん摩マッサージ指圧師(国家資格) | あん摩・マッサージ・指圧 | 必要 |
| はり・きゅうの施術所 | はり師・きゅう師(国家資格) | はり・きゅう | 必要 |
| 接骨院・整骨院 | 柔道整復師(国家資格) | 骨折・脱臼・打撲・捻挫などの施術 | 必要 |
国家資格を持つ人が施術所を開く場合は、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(あはき法)や柔道整復師法にもとづき、開設後10日以内に保健所へ届け出ることが定められています。施術所の構造や設備にも基準があります。届出の前に、図面を持って保健所に相談するよう案内している自治体も多くあります。
無資格の整体院でできないこと
「あん摩マッサージ指圧」を業として行えない
あはき法では、医師以外の人が、あん摩・マッサージ・指圧を業として行うには、あん摩マッサージ指圧師の免許が必要と定められています。はり・きゅうも同じく、はり師・きゅう師の免許が必要です。骨折や脱臼、打撲、捻挫などへの施術は、柔道整復師の業務にあたります。
そのため、国家資格を持たない整体院は、「マッサージ」「指圧」などの施術を行うこと、またそれをメニューとして掲げることはできません。お客様から「マッサージしてほしい」と言われても、資格がなければ応じられない点に注意してください。
体に危険を及ぼすおそれのある施術は避ける
整体やカイロプラクティックのような、国家資格のない療法そのものは、違法ではありません。ただし、厚生労働省の通知などで、いくつかの制限が示されています。滋賀県の案内では、主に次の内容が紹介されています。
- 人の健康に害を及ぼすおそれのある行為は、禁止・処罰の対象になりうる(1960年の通知)
- 椎間板ヘルニア、骨粗しょう症、脊柱管狭窄症など、施術に適さない疾患がある
- 首を急激にひねるような、強い力での回転を加える手技は禁止
- 施術を続けても症状がよくならない、または悪くなる場合は、施術をやめて医療機関の受診をすすめる
- 誇大な広告は規制される
お客様の体に不安がある場合は、無理に施術をせず、医療機関の受診をすすめることも整体院の大切な役割です。カウンセリングで既往歴や通院中の病気を確認しておきましょう。
広告や院名で避けたい表現
整体院の広告では、国家資格がないことを前提に、表現を選ぶ必要があります。次のような表現には注意しましょう。
- 「マッサージ」「指圧」「鍼灸」など、国家資格が必要な施術の名前
- 「治療」「治る」「完治」など、病気やけがを治すと受け取られる表現
- 「〇〇病に効く」「ヘルニアが改善」など、特定の疾患への効果をうたう表現
- 「整骨院」「接骨院」など、柔道整復師の施術所と誤解される院名
- 「必ず痛みが消える」など、根拠を示せない効果の断定
景品表示法では、実際よりも著しく良いと見せる表示(優良誤認)や、実際よりも有利な条件だと見せる表示(有利誤認)が禁止されています。整体院のよさは、施術の内容や流れ、カウンセリングの丁寧さ、院の雰囲気など、事実にもとづいて伝えましょう。
なお、国家資格を持つ人の施術所は、あはき法や柔道整復師法で、広告できる内容が限られています。資格を持っていて施術所として届け出る場合は、看板やホームページに載せられる内容を保健所に確認してください。
整体院の開業に必要な届出と保険
| 手続き | 窓口 | いつまでに | ポイント |
|---|---|---|---|
| 開業届 | 税務署 | 開業から1か月以内 | 青色申告承認申請書も一緒に出すと節税につながる |
| 施術所開設届 | 保健所 | 開設後10日以内 | あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師が施術所を開く場合のみ |
| 防火対象物使用開始届など | 消防署 | 使用開始の前(自治体の条例による) | テナントで店舗として使い始めるときに必要になることがある |
国家資格を持たない整体院であれば、保健所への届出は必要ありません。そのぶん、自分で安全への備えをしておくことが大切です。施術中にお客様にけがをさせてしまったときに備えて、整体院向けの賠償責任保険に入っておきましょう。業界団体や民間の保険会社が、施術者向けの保険を扱っています。
整体院の開業までの流れ
ターゲット、施術の内容、客単価、営業時間
スクール、講習、整体院での勤務
自宅・マンション・テナント・レンタルサロン・出張・フランチャイズ
国家資格者は施術所開設届も
国家資格が必要な施術の名前を使わない
Googleマップ・ホームページ・SNS・チラシ
流れのなかで後回しにされやすいのが、カード・電子マネー・QRコード決済の準備です。決済サービスは申し込みから審査、端末の到着までに日数がかかります。届出や内装の準備と同じタイミングで申し込んでおくと、オープン当日から使えます。初期費用をかけずに始めるなら、カード・電子マネー・QRコードにまとめて対応できる「Airペイ」が候補になります。
キャッシュレス決済は開業時に用意しておく
整体院は、国家資格者の施術所と違って健康保険が使えないため、施術料金はすべてお客様の自己負担になります。1回の料金が数千円になることも多く、回数券を用意すると会計の金額はさらに大きくなります。現金しか使えないと、お客様はそのたびにまとまったお金を用意しなければなりません。
また、仕事帰りに立ち寄るお客様や、急に体がつらくなって予約したお客様は、現金を持ち合わせていないこともあります。カードや電子マネー、QRコードで支払えれば、来院のハードルを下げられます。ひとりで営む院では、会計を手早く済ませることが、次のお客様の準備時間を確保することにもつながります。
決済端末は、iPadやスマートフォンとカードリーダーで使えるサービスが主流です。代表的なのが「Airペイ」と「Square」で、どちらもカード・電子マネー・QRコードにまとめて対応しています。予約システムとの連携や手数料、入金のタイミングを比べて選びましょう。出張整体なら、持ち運べるかどうかも確認してください。
サロン・店舗でよく使われている決済端末
開業後に長く続けるためのポイント
ターゲットと得意分野をはっきりさせる
整体院は、整骨院やマッサージ店、リラクゼーションサロンとも比べられる業態です。「誰の、どんな悩みに応える院なのか」をはっきりさせると、メニューや価格、発信する内容に一貫性が出ます。デスクワークの肩こり、産後の体の悩み、スポーツをする人など、得意な分野がわかる院のほうが、お客様に選ばれやすくなります。ただし、得意分野を伝えるときも、病気やけがを治すと受け取られる表現は避けてください。
通い続けやすい価格と予約の仕組みをつくる
整体は、何度か通っていただくなかで体の変化を感じてもらう施術です。1回の料金だけでなく、通う頻度を考えたときに続けやすい価格かどうかを考えましょう。施術のあとに次回の来院時期を提案する、お客様ごとにカルテを残して前回の内容を引き継ぐ、LINEで予約や案内を送るといった仕組みも有効です。強引に回数券をすすめるのは、トラブルのもとになります。
Googleマップと予約の導線を整える
「地域名+整体」で探すお客様は、Googleマップやホームページ、SNSを見て院を選びます。院の場所や営業時間、メニューと料金、施術スペースの写真、予約の方法がすぐにわかるようにしておきましょう。施術者の経歴や、施術の流れを載せておくと、はじめてのお客様も安心して予約できます。
よくある質問
- 整体院は資格がなくても開業できますか?
-
整体には国家資格がないため、資格がなくても開業できます。ただし、あん摩・マッサージ・指圧を業として行うにはあん摩マッサージ指圧師の免許が必要です。無資格の整体院では、これらの施術を行ったり、メニュー名に使ったりできません。
- 整体院と整骨院の違いは何ですか?
-
整骨院(接骨院)は、国家資格を持つ柔道整復師が開く施術所で、保健所への届出が必要です。整体院には国家資格がなく、保健所への届出もありません。整体院が「整骨院」と誤解される名前を使うのは避けましょう。
- 整体院に保健所の届出は必要ですか?
-
国家資格を持たない整体院であれば、保健所への届出は必要ありません。あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師が施術所を開く場合は、開設後10日以内に保健所へ届け出ます。
開業準備のご相談はエアライフへ
エアライフでは、整体院やサロンのホームページ制作、Googleマップの整備、SNSや求人まで、開業前後の集客をまとめてお手伝いしています。「オープンまでに何をそろえればいいかわからない」という段階からご相談いただけます。
あわせて読みたい開業の記事





















